A Solitary Battle Another World Fight Stories 9th stage第26話


その「KOTOWAZA」を思い出しているアイヴォスの横で、何か出来そうな事は無いかと

考えていたコルネールはこんな提案をアイヴォスとアーシアにする。

「じゃあよぉ、まずは実際にアーシアに魔術を見せて貰った方が良いかもな。そっちの世界に魔術ってあるんだっけか?」

「魔術? いいや全く普段の生活では見た事が無いな。そもそも魔術等と言うものは私の世界では

空想上の産物でしか無い。だから実際に見られると言うのであれば私は見てみたいものだな」

その空想上の産物が本当にこの世界に実在すると言うのならば、地球に帰ってからも

決して忘れる事は無いだろう。

その魔術とやらを見せて貰う為に、3人はログハウスの外へと出る。

「では頼む」

「それじゃ林の中だから、火属性以外の魔術の簡単なものをまずやるわね」

いよいよアーシアによる魔術のショーが幕を開けたのだが、次の瞬間アイヴォスは信じられない光景を

目の当たりにする事になる。


流石に火は落ち葉や木々に燃え移ると危険だと言う事で、水系統の魔術を披露する事にしたアーシア。

水の魔術をぶつけても良さそうな所に向かって腕を真っ直ぐに突き出し、手の平をそこに向けて呪文を唱える。

「偉大なる神エンヴィルークの力よ、我の手に水を集めたまえ……ウォーターボール!!

アーシアの手の先から放たれた水の砲弾が真っ直ぐに飛び、それがログハウスの横にある小さな木の幹に

狙いを外す事無くぶつかる。

「威力はまだ小さいけど、相変わらずの正確な狙いだな」

そんなアーシアの横ではコルネールが彼女を見て率直な感想を述べているのだが、異世界からやって来た

人間のアイヴォスは困惑した表情を浮かべている。

「……」

「魔術ってのはこの世界にとって欠かせない存在なんだ。自分の身を守る為にも、それから普段の生活にもな」

黙ったままのアイヴォスを見てコルネールが魔術達の説明をする。


だが、アイヴォスの沈黙の理由はコルネールのイメージするものとはまるで別物だった。

目の前の光景を見て、困惑と驚きで声が出なかったのである。

「魔術を実際に目の前で見てどうだった? ビックリしすぎて言葉も出ないか?」

やはり自分の元彼女だからだろうか、コルネールが若干誇らしげにアイヴォスに感想を聞く。

だが、それでも黙り込んで何かを考え込んでしまっている様な顔付きのアイヴォスにコルネールは訝しげな表情になった。

「……おい、どうしたんだよ?」

このまま黙っていても始まらないし話も進まない。

そう考えたアイヴォスは、自分の口から正直に今見た事を伝える。

「見えないんだ」

「え?」

キョトンとした顔つきになるコルネールを見て、アーシアもアイヴォスとコルネールの元にやって来た。


そんな2人に対して、ストレートな感想をアイヴォスは続ける。

「呪文を唱えて何かを飛ばしたのは分かったんだが……、どんな物体をどの位の量で撃ち出しているんだ?」

そのアイヴォスのセリフにコルネールとアーシアの表情が固まった。

「見えない……?」

「え、ちょっと待ってよ一体何を言ってるのよ?」

コルネールもアーシアも驚きの表情とセリフでアイヴォス詰め寄るが、驚いているのはアイヴォスの方もそうである。

「何を言っている、と言われても私が逆に説明して欲しい。今のウォーターボールと言う魔術は不発だったのか?

名前からすると水系統の魔術の様だが、あの木に当てたにしては木が濡れていないのだがな」


何だか話がかみ合っていない。

「おいおい待ってくれよ。テメーの方こそ嘘ついてんじゃねえだろうなぁ?」

自分の彼女の魔術を否定されて頭に血が上るコルネールだが、アイヴォスは冷静な口調で言い返す。

「私が嘘をついた所で何のメリットがあると言うのだ。私がむしろ説明して貰いたいものだな」

「それもそうよね。私達じゃ貴方の目にはなれないからねー……」

アーシアは納得したものの、コルネールはまだ納得出来ていない様子である。

「おーし分かった、じゃあそれ以外の魔術も存分に見て貰おうじゃねえの。何か1つ位は見えるだろ」

「えっ? 全部やるの?」

「当たり前だよ。ギルドCランクのお前が魔術を出してるのにそれを見えないなんて言われちゃあ、Aランクの

俺だって引き下がる訳にはいかねえよ」

いきなりランクの話を出して来たコルネールに、アイヴォスは率直に聞いてみる。

「そのギルドランクがAだと言う事と、魔術は何か関係があるのか?」

「ああ大有りさ。魔術が使えるのは冒険者としてはほぼ常識みたいなもんだしな。別に魔術を使わなくても俺みたいに

Aランクでやってる奴は居るけど、そんな奴は一握りさ。魔術があった方が格段に戦闘系の依頼は楽になるからな」

と言う事はコルネールもアーシアと同じ様に魔術が使えると言う事になる。

「ではその魔術を見せて貰おう。ただし山火事だけは勘弁して貰いたい」

「お前に言われなくたって分かってらぁ! それじゃ良く見てろよ? このエンヴィルーク・アンフェレイアの2つの神が

俺達生物に授けた魔術って奴をよぉ!」


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