A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第42話


「でも次に私が見掛けた時は、隣のテーブルに居た冒険者の方と一緒に何かを話していたみたいですが……」

「何っ!?」

まさかの情報が立て続けにやって来た。

本を読むだけでは無く、この図書館に来ていた冒険者達と話をしていたとなればそれだけ色々と

情報交換をしたと言う事になるだろう。

そうなればその冒険者を当たった方が彼の行き先について何か分かるかもしれないと思い、ライマンドは

セクハラまがいの方法……その司書の肩を両手で掴んでガクガクと揺さぶる。

「その冒険者達は何処に行った!?」

「え、あ、あああのその方達なら多分市内の宿屋に泊まっているかと……」

「どんな奴等だ!? 言え! 答えろっ!!」

「わ、分かりましたから揺さぶらな……」


もし騎士団長と言う立場で無ければ捕まっていてもおかしくないライマンドは、その冒険者達の

行方と容姿の情報を聞き出す事に成功。

図書館の捜索に当たらせていた部下の数人を連れ出し、町に居る団員も何人か動員して宿屋へと再度向かった。

「貴様等がその魔力を持たない男と会話をしていた連中だな?」

宿屋のエントランスで、司書の目撃情報と一致する容姿や装備の3人の冒険者達を騎士団員達が

囲んで尋問をしている。

「な、何だよ……俺達何もしてねえよ!?」

あの空気清浄機の話題を振っていた男がそう言うが、ライマンドは顎で部下に指示を出す。

その合図で騎士団員達がつかつかとその男に歩み寄って、男の左腕をライマンドに差し出させる。

「そうか。それじゃこれからこの嘘発見器を使って調べさせて貰うぜ」


宿屋の主人や屋台のオーナー、それからさっきの司書にもあの男を探す事ばかり考えていたせいで

使うのを忘れてしまっていた嘘発見器を、ここでようやくライマンドが使い始める。

金属製のリングになっているその嘘発見器は手首に取り付けて使用する。

これが体内の魔力に反応し、もし魔力が揺らいだりすれば動揺していると言う事でリングが赤く光るので

嘘をついている可能性が高い。

どんなに鋼の精神力を持つ人間でも、体内の魔力は揺らぎをしっかり見せてくれるので嘘をつけばすぐに分かるのだ。

だが今の状況でも動揺しているので一旦落ち着くまで時間を貰い、冒険者トリオが落ち着いた所でライマンドが

いよいよ質問を開始する。


「御前達は魔力を感じる事が出来ない人間と、その図書館で出会ったか?」

「ああ、出会った」

リングが赤くならないので魔力は揺らいでいない。この質問の答えは本当だ。

「あの図書館で、御前達はその男と何を話した?」

「何って……最近話題になっている空気清浄機の話だよ。俺達がその空気清浄機の話をしていたら、

その男が食いついて来たんだ」

またもリングは銀色のまま。これも本当である。

「その男は何でその話に興味を持ったんだ?」

「そこまでは知らねえよ。この図書館にもそう言う空気清浄機が使われているのかとか、国中にその空気清浄機が

出回っているのかとかそう言った事を聞かれた。それ以外は本当に知らねえんだよ!!」

やっぱりリングは銀色の状態でキープされている。


だがその男の横から仲間の男が思い出した事を言い出して来た。

「そ、そう言えばその男はワイバーンがどうのこうのって言ってたぜ?」

「ワイバーン?」

「ああ、ワイバーンの利用者は多いのかとかって……。だからその男、多分ワイバーンの牧場に行ったんじゃ無いのか?」

その男にも嘘発見器を取り付けていたが、この男のその証言からもリングの色は変化無しだ。

それを聞いてライマンドは考え込む。

「ふぅむ……だったらワイバーンの牧場に向かった奴等と連絡を取り合え。この男の証言に嘘が無いのは確定したから、

俺ももう少し尋問してから後で行く。牧場の職員はしっかり捕まえておけよ!!」

「はっ!」


部下の数人を牧場に向かわせたライマンドは、再度冒険者達の方に向き直ってここに残っている

騎士団員と共に尋問を再開。

「そうか……それじゃ質問を変えるが、貴様等は空気清浄機について何か知っているのか?」

「え、あ、そうそうそれであんた等騎士団に言いたい事があったんだよ!!」

このチャンスは幸いとばかりに、その知り合いの知り合いが空気清浄機を使って寝たきりになってしまった事や

医師の診断でも原因不明なので、国は何をやっているんだと罵倒を交えつつライマンド達に話した。


その話を聞き終えたライマンドの目つきが変わる。

「……その話、その男に話したのか?」

「話したって言うか聞かれてた。隣のテーブルだったし」

「成る程な。で、その知り合いの人間は何処に住んでいる?」

知り合いの情報を聞き出し、頷いたライマンドは騎士団員の1人に耳打ちしてその騎士団員に何かを命じて

宿屋を出て行かせる。

ライマンドはその騎士団員の後ろを見ながら、頭の中でこの後の展開を色々と決めていた。

(良し、こうなれば少々強引だがあの手しか無さそうだな……)

騎士団員が宿屋を出て行ったのを見て、その考えを纏めたライマンドは再度冒険者達の方に向き直った。


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