A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第37話


時間はさかのぼり、サーヴォスにまだ王国騎士団が向かっている途中。

ガラデンの町にようやく辿り着いたエヴェデスは、その町の宿屋に直行した。

「あ〜〜〜〜〜、やっとまともな場所で寝られるぜ!」

ナチスのロングブーツを脱いでベッドに寝転ぶ。

室内で土足がスタンダードなドイツ人も、流石にベッドではシーツ等が汚れるのを防ぐ為に靴を脱ぐ。

追い付かれるかも知れない、と言うのは分かっていても今の状況を整理する為に休息は必要だ。

(ええと、今は俺……ここまで来たのか)

カシュラーゼの地図を見て今の自分の位置を確認するエヴェデス。このガラデンの町でワイバーンに乗るとして、

そこから今度は何処に向かうべきなのだろうか?


(やばいな、全く見当が付かねーぞ)

先に宿屋に入らず町で情報収集してからでも遅くは無かったのかも知れないが、如何せん足の疲れに

エヴェデスはこれ以上耐えられそうに無かった。

軍人だからと言ってもロボットでは無いのだからしょうがない。

サーヴォスの町で買い込んだ食料はまだまだ大丈夫だが、服に関してはそろそろクリーニングに出したい……が、

自分に魔力が無い事を考えると出せそうに無いのでその辺りをエヴェデスは躊躇してしまう。

しかし良く考えてみれば、すでにこの宿屋にチェックインしている時にもう宿屋のマスターには魔力が無い事が

ばれてしまっている筈である。

そう考えたエヴェデスは、ひとまずこの血のついたカーキ色のワイシャツだけでも洗って貰おうと思い入口のカウンターへと

ロングブーツを履いて足を進めた。


カウンターでそのワイシャツを預けたエヴェデスだったが、明日の朝までにはクリーニングが出来ると言う事でその時

着ていたナチスの制服も全て預かって貰う事にした。

勿論恥じらいの心も持ち合わせているので、一旦部屋に戻ってあのドイツ軍の制服に着替えてから再びカウンターに預けに行く。

(問題はあの料理屋のマスターみたいに、騎士団に通報すると言う事を考えていない人間かどうかって事だよな)

そんな幸運が2回も続くとは思えないが、出来ればまだ幸運が続いていて欲しいと考える。

それだったらあの時の金もまだある事だし、まあまあ広い町でもあるのでワイバーンを探しに行くついでに何か

服を買いに行こうとエヴェデスは決意する。

それが最もシンプルで、そして今の自分が安全に逃げる事が出来る方法だと気が付いたからだ。

(前は金が無かったから着替えも買えなかったが、今は金があるから着替えも買えるぜ)

もっと良く考えてみればサーヴォスの町で服を買っておけば良かったんじゃないかとか、無理にクリーニングに出す必要も

無かったんじゃないのかとか、そもそもさっさとワイバーンに乗って次の町に向かえば良かったんじゃ無いのかとか色々と

作戦を立てられたが、今になってはもう過去の話なのでどうにもならない。


だったら今から軌道修正をすれば良いだろうと思い、まずは目当てのワイバーンが何処に居るかを町の人間に聞いてみる。

「ちょっと良いかな。ワイバーンの貸し出しをこの街でやってるって聞いたんだが……」

「ワイバーンだったら町外れのワイバーン牧場に行きなよ。そこで話を聞けば色々教えてくれるだろ」

「分かった。どうもありがとう」

町の男に話を聞き、その町外れのワイバーン牧場へと向かったエヴェデスがその目で見た光景はまず地球では

見た事が無いものだった。

「うわぁ……こりゃすげぇ……」

思わずそんな声が出てしまったエヴェデスの目の前に広がっていたのは、簡素な木の柵で囲まれたいかにも

「牧場らしい」牧場の敷地で飛び回ったり餌を貪ったりしている多数のワイバーン達であった。

ざっと見ただけでも30匹以上は居るであろう。


これだけ居ればワイバーンでの移動ビジネスも確かに成り立つよなー、と軍人では無く商売人の様な考え方をしながら

近くの職員の元に向かう。

「おーい、ここってワイバーンの牧場か?」

「ああそうだけど……何か?」

「ここに来ればワイバーンを貸して貰えるって話があったんだけど……」

そこまで聞いたエヴェデスに対して、職員の男はキョトンとした顔付きになる。

「えっ? レンタルなんてやって無いぞ?」

「え……おいおいちょっと待ってくれ、俺はレンタル出来るって話があったから来たんだけど!?」

まさかあのマスターに嘘をつかれてしまったのだろうか? それだとこの先の予定が更に狂う事になる。

血の気がゆっくり引いて行くエヴェデスに対し、職員は何処かやや遠慮がちにこう問い掛けた。

「もしかしてあんた、送迎サービスの事と聞き間違えたんじゃ無いのか?」

「え、あ……送迎サービス?」

この瞬間、エヴェデスは自分の早とちりであり勘違いだったと気がついて後ろ頭を掻いた。

「あーそう言えばそうだったかもな。そうそう、その送迎サービスって言うのは何処まで送ってくれるんだ?」

エスヴァリーク帝国までひとっとびがどうのこうのとあの料理屋のマスターは言っていたので、今度はその記憶に

間違いは無いと確信してエヴェデスは聞いてみた。


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