A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第26話


その頃、地球からやって来たドイツ陸軍の少佐は歩き続けてサーヴォスにようやく辿り着く所だった。

エヴェデスは今までのツキが無い、もしくはうっかりミスをしていた自分の経験から考えた結果、

あの道案内をしてくれた男は絶対に自分を怪しんでいると思っていた。

だから素直にゴリソニーの町へ向かうのでは無く、その裏をかいてこうして2日歩いてもっと歩いてたまに休んで

それからまた歩いて、途中で戦った事もあって袋の中の荷物が多くなってしまった。

勿論これには色々と事情があっての事である。

自分の事を追いかけようとするのなら、やはり事情聴取を騎士団はして来る筈だと考えた。

それから騎士団はその数に物を言わせて先回りする可能性も非常に高い。

エヴェデスに警察関係の知り合いは居ないものの、それでもテレビドラマ等で警察関係の役柄の行動を

見ていれば大体のイメージは湧く。


なのでそのイメージから騎士団がどう行動するかを判断し、まずは嘘の情報を流しておく。

すぐに向かう事が出来るゴリソニーの町の方に行く、と伝えておけば少しは騎士団の目を欺く事も出来るだろうと考えたのだ。

でもそれだけでは心許無い。

向こうは明らかな大人数で動いて来るだろうし、捜査網だって既に敷いている筈だから遠い方の町である

サーヴォスにだって騎士団を動かして来る筈だと思っていた。

(確かに道が整備されている街道だからと言って、見通しは良いけど隠れられない場所が完全に無い訳じゃ無いから、

いざと言う時はそこに隠れる様にしよう)


街道は馬車4台位がすれ違えそうなスペースで道が切り開かれている。

地球で例えるならばそれこそ対面通行の4車線道路、と言った所だろうか。

しかしその両端には木が生い茂っている茂みが続いている為、元々この辺りは林か森か分からないが

木が沢山生い茂っていた場所だと言う名残があった。

そこを切り開いて街道が造られたのであれば、隠れる場所には困らなさそうなのでエヴェデスはなるべく早足で

そのサーヴォスの町へと急ぐ。

(だがなぁ……騎士団って言えば俺のイメージだと馬も使うんだろうなぁ)

実際の話、あの最初の城があった場所からはボートでやって来てその川を下り切った場所にある町からは

馬車に潜り込んでやって来た為、基本的な移動手段に関しては地球の昔の移動手段と何も変わりは無い様だった。


そうなると騎士団の馬の使用も簡単にイメージ出来たエヴェデスは、結局はこっち方面に向かって来る騎士団の馬が

自分にいずれ追いついて来るだろうと予想する。

(もっと近い町ならまだアドバンテージが無くなる前にその町に着ける可能性があるから良かったけど、

歩いて2日って事は馬ならもっと時間短縮して辿り着けるって事だよなぁ?)

歩いて2日は相当長い距離になる。

しかもノンストップで歩き続けられる訳では無い。人間である以上は歩けばそれだけ身体のエネルギーも使うし、

そうなると腹だって減るし当然疲れれば眠くなる。

食料はあの倉庫から持って来た分で何とかなるかな……とは思っているが、流石に眠気までは人間である以上どうにもならない。

極限状態まで寝るのを我慢する位に追い込んだ上で実地訓練をする軍の部隊も存在しているし、エヴェデスもそれに

近い訓練をさせられた事もある。


でも、それが何時でも何処でも出来るかと言えばそうでも無い。

食べなきゃ身体を動かせないし、眠ければ正常な判断も出来ない。それが人間だからだ。

そしてこの時、エヴェデスは先を急ぐ余り重大な事を忘れていた。

疲れやすさ等を考えるよりも、今はとにかくずっと歩き続けてサーヴォスの町に少しでも近づく為にエヴェデスは足を動かし続ける。

このままのペースで進んだ場合、今日は一体何処まで行く事が出来るのだろうか?

あの男に教えて貰った通り、エヴェデスは各方面への道案内をしている立て札を見つけたのだが具体的な距離までは

書かれていなかった為、自分が今何処まで進んだのかが分からない。

何しろ、この街道は進んでも進んでも景色が殆ど変わらない……それこそまるで無限に何処までも続く様な道を

進んでいる様な錯覚に陥りそうだったからだ。


(あー、何か退屈になって来たな〜)

かと言って騎士団に追いつかれるのだけは勘弁して欲しいと考えながら歩くエヴェデスの前に、いきなりガサッと茂みを

揺らして何かが飛び出て来た。

「うお!?」

ただ単に歩き続けるだけで気が抜けてボーッとしていたからか、自分でもオーバーな位にビックリしてしまったエヴェデスの

行く手を武器を持った男女が塞いだ。

「な、何だお前らは!?」

突然の事で軽いパニック状態になるエヴェデスに対して、その連中は鼻の頭から下を布の覆面で隠しつつ襲い掛かって来た。

エヴェデスは当然ここでそんな連中にやられる訳にはいかないので、自分の持っている麻袋を自分の後ろに

放り投げて身軽な状態になる。

相手はパッと見る限りで5〜6人。普通に考えれば1人では敵わない。

そう、茂みに隠れやすいのは何もエヴェデスだけでは無かったのである。


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