A Solitary Battle Another World Fight Stories 8th stage第13話


これは夢だ。自分は長くて悪い夢を見ているんだ。

そう思いたかったエヴェデスだが、これまでの経緯を回想してみるだけでもここまでリアルで

ここまで現実味のある夢は今までに見た事は無い。

ここまで来たら幾ら自分が認めたく無くても、周りの状況が嫌でも自分に認めさせようとしている事に気が付いた。

(こうなったら、何処かで世界地図を手に入れなきゃ気が済まねえぜ)

世界地図じゃ無くても、この周辺だけじゃ無くてなるべく広範囲に渡る地図を手に入れられる様に行動したい。

しかしこの状況下では迂闊に動く事も出来ない。

恐らくさっきのオーナーが、王国騎士団員に自分の事を通報したのだろうと言う予想は簡単についた。

もし見つかったら捕まって、そしてあの筆頭魔術師だかの胡散臭い称号が付いている男の元へと連れて行かれるだろう。

それだけは何としてもエヴェデスは避けたい。


だけどこの格好は明らかにバレてしまっている。

(どうにかしてこの町から出なきゃな……)

その「どうにか」が普通に町を出ようとするなら不可能に近い。

ならばその状況をひっくり返す為に、そしてなるべく安全に町を脱出するのであれば目立たない様にする必要がある。

(リスクを低くするならあの手しか無さそうだな)

1回だけリスクを高くして後で低くするにはそれしか無い。

問題はそれを何処でやるかと言う事だが、一先ず下に下りないと話が進まないので階段を下りて路地裏に戻る。

そこから今しがた4階部分から見ていた自分の位置を思い出しつつ、恐らくこっちだろうと言う予想でメインストリートの

方に向かって歩いて行く。


すると、路地を抜ける所で騎士団員がバタバタと行き交っているのが見えた。

(……結構な数だぜ……)

だけどこの数だったら1人位居なくなった所でばれ難いとも考えたエヴェデスは、行き交う騎士団員の1人を自分の

183cmの長身を活かしてグイッと路地裏に引きずり込み、ナチスのトランクで思いっ切りぶん殴って気を失わせた。

(これで良し……)

今しがた気を失わせた騎士団員の甲冑に手を伸ばす。

そう、この甲冑を着込んで騎士団員に紛れて町を脱出すれば良いのである。スパイ物のアクション映画等では

非常にありきたりだが、現実では余りそう言う話は聞いた事が無いエヴェデス。

トランクを持っているのが少し気がかりではあるものの、気を失った兵士がその意識を取り戻すまでにどれ位の

時間が掛かるか分からないので手早く脱がせる。


だけどなかなか甲冑を取り外せない。

現代のファッションではまずお目にかかれない装備品なので、エヴェデスはパーツを見ながら1つ1つ確実に

取り外して行くしか無かった。

およそ8分の時間が掛かってしまったが、それでも何とか甲冑を全て取り外す事に成功。

まだ気を失った兵士が起きていない事も幸いし、さっさとこの甲冑に着替えて逃走を図る。

(ええと……最初にこれをつければ良いのかな)

いそいそとまずは胸当てから取り付けるべく自分の胸に押し当てるエヴェデス。

だが次の瞬間、またしても地球の常識では考えられない事が彼の身に襲い掛かるのであった!!


バチィィィッ!!

「ぐあっ!?」

突然彼の身体を衝撃が襲う。

痺れる様な痛みが胸全体に広がり、それと一緒に風船が破裂する様な音とまばゆい光が一緒に発生したのである。

「……は、え、何だぁ!?」

胸の痺れは徐々に治まって行ったが、心拍数は未だに跳ね上がったままだ。

何が起こったのかエヴェデスはさっぱり分からずに呆然とするだけだったが、ハッと気を取り戻して辺りの様子と

騎士団員の状態を窺う。

(……良かった、起きてねぇ)

今の衝撃と音と光はかなりのものだったので騎士団員が目を覚ます恐れがあったが、何とかまだ大丈夫らしい。

もしこれで騎士団員が起きてしまっていたら、エヴェデスは変装を諦めてこの場から退散するしか無かったのだから。


気を取り直して、先に今度はスネ当てから取り付けてみるか……と甲冑のパーツからレガースを拾い上げて

足に装着してみる……。

バチィィィッ!!

「ぐあっ!?」

またしても同じ現象が起こり、足に痺れと痛みが同時にやって来た。

しかもそれが原因で更に事態は悪化して行く。

「おい、何だ今の音は?」

「こっちから聞こえたぞ、確認しろ!!」

「……!!」


メインストリートからさほど離れた位置で着替えようとしていたのが災いして、どうやらメインストリートの方にまで

その音が聞こえてしまっていたらしい。

バタバタと慌ただしい足音と、鎧のガチャガチャと言う金属音がミックスされてエヴェデスに近付いて来る。

足元に転がっている騎士団員はまだ起きていないが、この状況ではもはやそんな事は言ってられない状況である。

一体何がどうなっているのかさっぱり分からない。

(くそ……こうなりゃ!!)

仕方が無いとエヴェデスは決心する。

足元に転がっている騎士団員の武器であるロングソードが取り外した甲冑のそばに落ちているので、

それを拾い上げて武器として使おうと思った……のだが!!


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