A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第58話


不思議なその音に対し自分が蹴り付けた部分の地面を見てみれば、そこからは金属の部分が姿を見せていた。

(こ、これは……)

その場に膝をつき、その場だけ良く見なければ分からない位に軽く土が盛られているのを確認する。

いや、もうすでに取っ手の部分が土の間から見えていた。

今の時間帯がまだ夕方だと言う事が幸いした。

もし完全に陽が沈んでしまっていたのなら、蹴り付けた時の金属音はしてもこの取っ手を見つける事は

出来なかったであろうとアルジェントは思いつつその取っ手を引っ張ってみる。

するとギギィ……と言う重苦しい音と共に、明らかに人間の手によって造り出された地下への階段と

その奥に続く通路がゆっくりと姿を見せたのである。

「あった……」

思わずポツリと呟くアルジェントは、もう迷っている時間は無いとばかりに階段を下り始めた。


階段を降りたその先では通路が直角に曲がっており、その先から足音が聞こえて来る。

自分がここへの入り口を開けた事で確認しに来たのであろうか、あるいはただの定期巡回の見張りか。

はたまたラニサヴか。

もしくはそれ以外の「何か」かは分からないが、少なくとも自分以外の生物が居る事は確かだったので

アルジェントは壁に張り付いて曲がり角から先を窺う。

そこには明らかに武装している、小柄だがスキンヘッドの厳つい風貌の男がアルジェントの方に向かって歩いて来ているのが見えた。

こうなれば先にやっちまえと言う精神で、アルジェントはそのスキンヘッドの男の前に飛び出して全力で顔面にハイキック。

「ぐわっ!?」

怯んだ男に対して今度は股間を蹴り上げてやり、長斧を握る手に力が入らなくなったスキンヘッドの男の身体を

一気に持ち上げて奥に見えるドアに向かって全力で突進。

「らあああああああ!!」

見張りの身体を持ち上げてそのままドアに向かって突進し、重さとスピードでドアをぶち破りつつ奥の壁まで

突進して見張りをブン投げる。

ブン投げられた見張りは、その壁の前に置いてあった色々な用具や材料が整理整頓されて並べられている

大きな棚を破壊して派手にノックアウト。


当然、その衝撃音で室内に居た色々な人間達がアルジェントの存在に気が付く。

「なっ、何だあいつは!?」

「侵入者だ!! 迎撃準備!!」

バタバタと室内が慌ただしくなる。

地下に造られた室内……と言っても、あの資料をゲットした様な普通の狭苦しい地下室では無い。

どちらかと言えば空港のロビーの様な、天井の高い巨大空間が地下にそのまま埋め込まれた感じだ。

地下なので天井に窓なんか必要無いが、天井一杯に備え付けられている照明設備が地下だと言う事を

忘れさせてくれそうな場所である。


しかし、そんな場所で行われている事はこの世界を破滅へと導く事になるであろう凶悪な計画の下準備。

それをストップさせる為にアルジェントはわざわざここまでやって来たのだ。

室内の天井の高さと広さを利用して、至る所に培養の為に設置されているカプセルが並んでいる。

そのカプセルの中には得体の知れない奇妙な生物が1体ずつ入っている。

これ等が世界中に解き放たれたら、最初はそうでも無いだろうが徐々にこの世界を破壊して行く事はアルジェントにもイメージ出来た。

その破壊活動なんて絶対にさせる訳には行かない。自分が地球に帰れなくなってしまうかも知れないから。

見張りの男をノックアウトし、続いて右足で蹴り掛かって来た女のその右足を掴んでジャイアントスイングで遠くへと投げ飛ばす。

室内は広いが開発用の機械や機材やテーブルに棚等が至る所に置かれているので、なかなか武器を

振り回せない状況なのがアルジェントにとっては救いだった。


武器を振り回しにくいと言う事は、それだけ機動力に優れる徒手格闘術の方が場合によっては有利な場面が多くなる。

更に普通の武器は使えないが、ここには「武器になりそうな物」が数多く存在しているので無理に剣や弓等を

奪い取る必要も無いと言うのもまたアルジェントに有利に働いた。

なので大人数相手にガンガン臆する事無く攻めて行く。怯んだら負けだ。

ロングソードを振り被って向かって来た男に先に抱き付き、男が向かって来たその勢いを利用して近くの棚目掛けて突き飛ばす。

後ろを向けば別の女が魔術師の杖を構えて向かって来たので、グルッと足首をスナップさせてしゃがみながら横に1回転し、

低い体勢から相手の膝を崩してアゴ目掛けて左アッパー。

追い打ちでアッパーをかました頭部を地面に叩き付けてフィニッシュしたがまだ敵は居る。

ナイフを突き出して来た男の右腕の外側に回って、肩からその腕を逆方向にへし折りつつ膝蹴りを腹にかまして地面に叩き付け、

続けて逆側から小振りな斧を手に向かって来る女の腹を前蹴りで蹴って、前屈みになった女の頭に間髪入れずに再び前蹴り。

彼女が倒れた後ろからデスクに乗ってアルジェントに飛び掛かって来た男には、スッと横にかわしながら彼の身体をキャッチして、

そのまま後ろの大きなキャビネット目掛けて投げ飛ばした。

これ以外にも攻めて倒し続ける事でトータル30人撃破。残るは……。


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