A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第4話


その結果、リオスは自分の予感が悪い方向に的中してしまったと頭を抱える事になってしまった。

今、自分が居るこの町の名前はヌーフラット。このヌーフラットがある国の名前はイーディクト帝国。

そしてイーディクト帝国があるこの世界の名前はエンヴィルーク・アンフェレイアと言うそうだ。

少なくともリオスにはエンヴィルーク何とか等と言う世界の名前に聞き覚えは無い事は確かだった。

となれば、十中八九自分が居る今の状況は異世界、と言う事になりそうだと頭がクラクラするのを

リオスは十分に感じ取った。

自分は一体、これからどうすれば良いのだろうか。

こんな訳の分からない世界に来てしまった以上は、何とかして元の自分の世界に帰る事を

第一に考えなければいけないだろう。

何故自分がこんな目に逢わなければならないのか。そんな気持ちがリオスの頭を更にクラクラさせる。


そのクラクラする頭を手で押さえながら、生きて行く為にはまずは金を稼がなければならないと考えた

リオスは働き口を見つける為に動き出す。

(まさかこの年齢になって就職活動とは。もう俺、今年で35歳なんだぞ……)

そんな事を心の中で呟いてみても、溜め息を吐いたとしても現状は何も変わってくれない。

自分から動かない者にチャンスは巡って来ない。

就職して働いて、金を稼ぐ為には自分から動いていかなくては。

軍人として上の地位に行く事だって同じであり、自分から進んで戦術や指揮官としてのあり方を学んで、

それを活かしていかなければならない。

が、悪い事は重なるのだろうか。

夕暮れ時の為に店じまいをしてしまった店も多く、やっと見つけた幾つかの店でも人手が足りているとの事で断られてしまった。

しかも、リオスは軍人として活躍する事を考えた人生の歩み方をして来たので普通の就職活動をした事が無かった。

そんなリオスがいきなり飛び込みで職を得られる程世の中が甘く無い事は、どうやらこの世界でも地球でも同じらしい。

いずれにせよ、このままでは文無しで路上生活のホームレスになってしまうのはそう遠い未来の事でも無さそうだ。

それだけは避けたいリオスが更に働き口の聞き込みを続けると、完全歩合制で自分の能力が活かせそうな

働き口を紹介して貰える事になった。


この際、犯罪以外なら何でもやってやると意気込んでリオスが連れて来られた場所。そこは……。

「歩合制、か……」

確かに歩合制ではあるが、明らかに普通の仕事では無い。

自分の身体を使って稼ぐのは勿論そうなのだが、そのやり方が普通では無い。

それもその筈、目の前に広がる光景は大勢の男女が観客となって一点に視線を集中している。その観客達の視線の先には

血しぶきを上げながら戦う2人の男の姿がある。更に、その男達が戦っている場所は高い六角形の金網で仕切られており、

観客達に突っ込む等のアクシデントが起こらない様に対策もされている。

つまりここは闘技場だ。

思い返してみれば、地球でも古代のコロッセオを始めとして色々な闘技場が出来て来た事は間違い無い。

それからただの殺し合いだった闘技が、格闘技を始めとした様々なスポーツに切り替わって来た事を考えてみると、

結局人と人が争うのはスポーツでも戦争でも、それから政治の権力争いでも何も変わらないのだな、と何処か遠い目をして

リオスは心の中で呟いた。

(コロッセオが古くなれば、時を経て時代が移り変わって今は世界のあちこちの都市にスタジアムが出来る。

そのスタジアムの中ではまた人と人が、スタイルは違っても争いを起こす。人間の本質って奴か)

そして、例えば競馬を始めとするスポーツに金を賭けるギャンブルも生まれる。

最も足る物がカジノであり、賭け事が好きな人間も異世界に居るものなのだなとリオスはそうした人間の本質に苦笑いを

浮かべるしか無かった。


リオスは聞き込みに行った時に、屈強そうな男に話しかけたら良い働き口があると紹介されてのこのこついて来た先が街外れに

存在している地下の闘技場であった。

こんな場所にこうした施設を造ると言う事自体もう想像がつきやすいのだが……やはり表立って開催する事が出来ない

アンダーグラウンドな物である事はリオスにもすぐに分かった。

つまりあの案内してくれた男の言う働き口とは、リオスにここで戦って自分で金を稼げと言う事であったらしい。

「……全く、こんな訳の分からない世界で再び戦う事になるとはな……」

はぁーっと溜め息を吐きながら思わずリオスはそう呟く。

そもそも自分は今戦う気分じゃない。出来れば賭ける方にしたいのだが……先立つ物、つまり金が無いのでそれは無理だと

また溜め息が出てしまう。そんな溜め息をつくリオスだったが、闘技場で金を稼ぐ以外の手段があるのだろうか、とこれまでの

就職活動を振り返ってみて思う。何か良い手立ては無いものだろうか、と思いつつも、軍人の端くれとしてこの世界の戦い方は

どう言う物なのだろうかと言う事には正直興味が無い訳では無かったのでリオスはしばらく戦いを見物してみる事にした。


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