A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第39話


「貴様、ここで何をしている?」

「怪しいな、詰め所まで来て貰おう」

リオスの後ろに立っていたのは、一目でそれと見て分かる甲冑に身を包んだ6人組の男女……この町の警備を担当する騎士団員達であった。

「な、あ、いや……」

ホルガーの事に集中する余り、まさかこんな展開になるなんて思っても見なかったと今のリオスは冷静な判断が出来ないままうろたえる。

そのうろたえる素振りを見て、騎士団員のリーダー格であろう男がその他の騎士団員に指示を出す。

「立たせろ」

「はっ!」

抵抗する間も無くリオスは騎士団員達に立たせられてしまい、後ろ手に荒縄で拘束されてしまってそのまま詰め所へと連れて行かれてしまった。


「……どうも、ご迷惑かけました」

翌朝。宿屋では無く町の騎士団の詰め所の牢屋で朝を迎える事になってしまったリオスをホルガーが迎えに来た。

そして、気まずい雰囲気でお互い無言のまま宿屋に戻る事に。

「すまない……」

「謝る前にまず理由を教えてくれよ。何で騎士団に捕まる様な真似をしたんだ」

「ああ、ちょっと外の空気を吸いに……な。この先の事が不安だったから」

まさかそっちの事を尾行していた、何て事を言える筈も無いリオスは適当に話を作っておく。

だがホルガーの疑惑の疑いは晴れない。

「俺があそこの詰め所に居る騎士団員から聞いた話によれば、あんたは物陰に隠れて何か様子を窺っているのを路地裏の巡回を終えて

大通りに出ようとした所であんたのその姿を見つけたって話だったけど? 外の空気を吸いに行くなんて様子には見えなかったけどなぁ?」

まだ話は終わっちゃ居ないとばかりにそうまくし立ててくるホルガーに、リオスは如何したものか……と焦る。


そこで、ホルガーの名前を出さないギリギリのラインで話を振ってみる事にした。

「……実はあんたと出会ったあの町で、あんたと出会う前に見かけた怪しい人間を俺は尾行していたんだ」

「怪しい人間?」

どんな奴だ、と聞いて来るホルガーにリオスは何とか話を続ける。

「俺、あの町に居る時に財布をすられそうになって。そしてそのスリをしようとした男を捕まえて騎士団に突き出したんだ。

だけど昨日の夜、外の風に当たりに歩いている時にその男を見かけた。明るい銀髪の男だったし、派手な赤の上着を着ていたから

すぐに分かった。だからこそ、俺はその男の事が気になって尾行していたら、運悪く騎士団に捕まってしまったんだよ」

「ふぅん……」

何処か生返事にも似た声色でホルガーがリアクションをする。


そして、その後にこんな一言を。

「……嘘だろ?」

「え?」

「俺の後を尾けていた事位知ってるよ。あれだけ静かな町の中だったら、例え俺だって誰かに尾行されている事位分かっちまうって」

「……やっぱり気が付かれていたか」

だったら小芝居も終わりだとばかりにリオスは溜め息を吐く。

「君が昨日の夜、あの宿屋から出て行くのを俺は見かけた。しかもやたらと周りに警戒をしながらだったからな。俺はそれがどうしても

気になって仕方が無かった。勝手に尾行をしていた事は謝るけど、だったら何故俺に気が付かれない様にしてまであんな真夜中に

この宿屋を抜け出す必要があったんだ?」


その尋問とも取れる問いに、ホルガーははっ、と鼻で笑って答える。

「おいおい、俺はただ単にあんたに合いそうな指輪を探しに向かったんだよ」

「指輪?」

まさか魔道具の事か? とリオスが尋ねるとホルガーは首を縦に振る。

「そうそう。武器は確かあんたは触れないはずだったけど指輪ならどうかと思って名。俺の知り合いが経営している店だから、あんたを

驚かそうと思ってその店に向かってたんだ。……そうだ、良かったら俺とその店に今から行ってみるか?」

「え?」

「もうあんたを驚かせる必要も無くなった。と言うよりも、逆にこっちが驚いちまったからな。まさか宿屋に戻って寝てたら騎士団員が

この部屋に尋ねて来て、そしてあんたが騎士団に捕まったって話を聞かされて朝から慌ただしかったんだからさ」

「……」


自分の行いを酷く後悔して、リオスは溜め息しか出なかった。

(あー……自分が恥ずかしいな……)

多分この出来事に関しては、いずれ地球に戻れる時が来たとしても忘れる事は無いだろうと言う位深くリオスの脳にインプットされてしまった。

まさか35歳と言う、四捨五入してみればもう40代になると言うこの年齢でこうして騎士団に捕まると言う失態を演じただけで無く、

今の自分の相棒になってくれているこの世界の案内人でもある便利屋の男にまで迷惑をかけてしまったのだからそのショックは大きかった。

「まー、そこまで気にしなくてもいいよ。少なくとも俺はもう気にしていないし。それにその店は良い物を作ってくれるから、それを見たら

そのショックも吹っ飛んじまう筈だぜ?」

「……だと、良いがな」

「そう暗くなんなって!! さぁさぁ、出かけるぞ!!」

リオスを半ば強引に身支度させ、ホルガーが真夜中に向かったと言うその制作ショップへとその張本人が案内を始めるのだった。


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