A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第16話
地球とは違うこの世界、エンヴィルーク・アンフェレイアにやって来て初めて夜を明かしたアルジェントは、
部屋にやって来たラニサヴに起こされる所から2日目がスタートした。
「起きろ。貴様の処遇が決定したから聞いて貰わねばならん」
「ん、あー……分かった……」
いきなりこんな世界に来てしまった事で未知の経験に身体が慣れていなかったせいか、
余り眠れていなかった様でまだ眠い目をこすりながら軍服姿のままでベッドから起き上がる。
そんな彼の目の前に、ずいっとトレイに載っている食器類が突き出された。
食器類にはそれぞれパンやお茶が盛り付けられたり注がれたりしている。
「まずは食事を摂っておけ。そんな寝ぼけた顔と頭では話し合いにならんだろうからな」
「ああ……サンキュー」
食事を出してくれるのはありがたい。
アルジェントはまず、目の前に突き出されたトレイを受け取ってその上に載っている食事を平らげる事に専念し始めた。
この世界の食材で作られたブレックファーストを終え、アルジェントはラニサヴと一緒に食器を
詰め所の食堂に返した後に小会議室へと向かった。
そこでラニサヴから重要な話があるらしい。
(重要な話って言っても色々あるからな。まぁ何が来ても俺には怖いもんなんてねーけどよ)
最も有力なのはそれこそ、これから先の自分の処遇であろうとアルジェントは考えていた。
(こっちの世界の奴等からしてみりゃー、俺ってイレギュラーな存在らしいからな。その対応も含めた上で、
俺に対しては色々ともっと詳しく調べる……とかそう言う話なんじゃねーかな?)
多分そんな感じだろと予想しつつ、その小会議室へと通されたアルジェントはU字型テーブルの座席の
1つに座らされ、そのU字の反対側にラニサヴが座って話がスタートした。
だがラニサヴの口から出て来た話は、まるでアルジェントの予想から離れたものであったのだ。
「これから騎士団で貴様を都のバルナルドまで護送する事になったのだが、その途中で騎士団の任務で
寄らせて貰う場所がある。それについて話をさせて貰おう」
「えっ?」
自分のこれから先の話と言うのは間違い無かったのだが、その途中で寄る場所については、例えば食糧補給の為の
食料品店や睡眠の為の宿だったり位しか思いつかない。
そもそも、自分がイレギュラーな存在ならばそれこそ早く都まで送り届けるべきなんじゃ無いのだろうかと思ってしまう
アルジェントだったが、今はとにかく黙って話の続きを聞く他は無いだろうと口を閉じたままにしておく。
「えっ? と言われてもな。この寄る場所は俺達騎士団にとって重要な場所だし、都からも離れた場所だから
この機会に寄っておくべきだろうと思ってな」
「は、はぁ……」
その寄りたい場所にもよるのだが、もしかしたら自分が元の世界に帰る方法が何か見つかるかも知れない。
そうだったら良いんだけどと思ったアルジェントは、その寄りたい場所の話を聞かせて貰う為にラニサヴに話の続きを促した。
「じゃあその場所の話、聞かせてくれよ」
「ああ。その場所は洞窟なんだが、そこには「魔石」と言う鉱物が埋蔵されていると言う言い伝えがあってな。
他の国では色々な場所で見つかっているのだが、我が公国ではまるで発掘出来ていない状況だ。
しかし、その洞窟の場合は他の国から渡って来た学者の調査によって魔石が埋まっていると判明している。
だから我々公国騎士団がそれを発掘して回収し、大公の元に届けるのだ」
「そうなのか。で、その魔石って言うのは何に使うんだ?」
話を聞いていると、いわゆる石油資源とかの化石燃料的なエネルギーなのかな……と考えてみるアルジェントだが、
そのまま話を聞き続けると予想を超えた物であると判明したのである。
「魔石はこの世界に存在している魔力が固まって出来た鉱物でな。人々の生活がこの魔石の発見によって劇的に変わったのだ。
例えば魔石を使って簡単な焚き火を起こしたりする身近な使い方から、城壁にかかっている魔術による防壁のエネルギーを
編み出したのもその魔石が見つかってからの話になる。だが……」
そこで一旦言葉を切り、悔しそうな顔つきをアルジェントに見せてから公国騎士団長は口を再度開いて話の続きをする。
「だが、我が国では未だに魔石が見つかっていないのだ。だから他国からの輸入に頼るしか無い。こればかりは幸運な国だと
言われても、今までの歴史上で魔石がこの公国内で見つかっていないのだから仕方が無いだろうと歴史学者達も言っている」
「お、おう……」
そう言われても、部外者であるアルジェントは「あーそうですか……」としか言えない様なリアクションしか出来なかった。
「その魔石って言うのを見つける為に洞窟に寄るのは分かったんだが、何故俺にその話をしたんだ?」
発掘作業に騎士団を連れて行くのだったら、人員は確かに多い方が良いだろうと言うのはアルジェントにも分かる。
だけど都で自分の事を調べたいのだったら、その連れて行く人員達とはまた別に自分を都へ送り届ける為の人員位
確保出来るんじゃ無いのか? とアルジェントは思ってしまった。
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