A Solitary Battle Another World Fight Stories 7th stage第4話


「……ん……」

何だか眩しい。

そう考えたアルジェントが目をゆっくりと開けてみれば、そこには澄み渡る青空が広がっている。

何処からか鳥の鳴き声も聞こえて来た。

「……って、ここ何処だよ!?」

ガバッと身を起こして周りをキョロキョロと見渡すアルジェントが、何かがおかしいと思ったのはすぐの事。

だって、自分はあの倉庫の中に居た筈だったのに。

しかも時間は夜だった筈なのに。

そう思うアルジェントの黒いブーツに伝わる地面の感触は、舗装すらされていない土。

何処かの森か、はたまた林の中であろうか周りに沢山生えている木々の匂いがツーンと鼻につく。


自分は一体どうしてしまったのだろうか。

あの倉庫の中で、パイロンを持ち上げた時に強い光が自分の身体に襲い掛かった。

そこから先で意識を飛ばしてしまって……とアルジェントは考えてみるものの、何でこんな場所に居るのかさっぱり分からない。

(考えつくのは誰かが俺をさらってここまで連れて来たか、それとも何かの超常現象か、あるいは俺が

夢を見ているのかのどれか位しか思い浮かばねーなー)

とりあえず、自分の頬を思いっ切りつねってみて痛い事を確認する。

「あだだだだっ!! ゆ、夢じゃねえみたいだな……」

夢じゃない事が分かれば残る可能性は1つ目か2つ目。

しかし2つ目は今まで生きて来た中で自分にとって最もあり得ない事だとアルジェントは判断し、1つ目の可能性を信じる事にする。

(だったらこれは誰が一体何の目的でどうやってここまで俺を運んで来たのか、って事を説明して貰わなきゃ納得出来ねーっつの)

今の自分はまだ演習の日程の真っ最中だと思いつつ、アルジェントは土の地面を黒いブーツで踏みしめながら歩いて行く。


ドッキリテレビの企画にしては何故自分の様な軍人を狙うのかがまるで意味が分からないし、そもそも大規模な軍事演習中に

こんなドッキリの企画を軍の上層部が許してくれるとは思えないとアルジェントは考えていた。

(一応軍事演習なんだし、一国の軍の演習だけならまだしも他の国と一緒にやってる訓練なんだから、取材のクルーが

来る事はあるだろうけど……)

考えれば考える程に訳が分からなくなって来るアルジェント。

元々頭を使う事が余り得意では無い性格の為、これ以上考えても今はどうしようも無いと判断してその事を頭から打ち消す。

(こんな馬鹿げた事考えた奴の頭の中が見てみてーもんだぜ、くそっ)

名ばかりとは言えども自分の地位は少佐。

佐官の1人であると言う責任感みたいなものは、例え名ばかりなので権限が無いに等しいにしても心の何処かで無意識に

持ち合わせている事に気が付いた。


(俺、意外と仕事には忠実なのかな?)

自他共にめんどくさがりな性格だと思っていて思われてもいるアルジェントは、自分だけでもその認識をこの訳の分からない

状況の中で改める事になるのかな……と思ってしまう。

(まぁそれはそうとしても、今はとにかく演習場に戻らなきゃならねーだろうしなぁ)

もし、この摩訶不思議な状況がドッキリ企画でも何でも無い場合、急に軍の施設から将校が1人消えてしまった事に

なるので大きな騒ぎになる事は間違い無い。

(そうだったとしたら、特に俺の軍にはダメージが大きそうだぜ)

同じ演習に参加しているガラダイン、ドイツ、ロシアの3つの国から自分の所属しているヴィサドール帝国軍に対しての

バッシングがされる事に繋がるのは、頭を使う事が苦手なアルジェントにさえも簡単に予想出来る事である。

だからこそ、そのバッシングを受けない為にもアルジェントはさっさと軍の合同演習に戻らなければならないと思っていた。


……のだが、そんなアルジェントが土の地面を踏みしめて歩いていた時に思わぬ光景に遭遇する事になる。

「……はっ?」

それは今まで30年以上生きて来た中で、絶対に見た事の無い光景であるのに間違い無いとアルジェントは判断する。

何故ならアルジェントの視線の先には、ズシンズシンと重そうな足音を立てて動き回っている生物が居たからだ。

(何だ、ありゃあ……)

ライオンの頭なのに身体はヤギであり、更にその身体からは蛇の様な尻尾を生やしている上にドラゴンの様な翼まで生えている。

明らかに地球上には存在しない生物だと言うのが、一目見たアルジェントにも分かる位の異形の生物だ。

もしかしたらドッキリの企画として、あれを見てどう言うリアクションをするのかと期待しているテレビクルーが何処かに居るのでは

無いかとアルジェントはキョロキョロと周囲に視線を巡らせるものの、自分以外に人間の気配は無かった。

(どう言う事だよ……)

誰かこの心に沸き上がった疑問に答えてくれるのであれば、例えそれがテロリストであろうともアルジェントはその答えを聞くつもりであった。

だけどテレビクルーもテロリストも居ないと判断したこの状況で、視線の先に居るその異形の生物の動きに目を奪われるしか無かった。

そしてこれからどうするか?

アルジェントはそれを考え始めたのだが、この後に衝撃の事態が!!


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