A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第45話
しかし、アイベルクの質問と引き換えに男からも質問があるらしい。
「答えても良いが、俺が答えたらこちらの質問にも答えて貰いたい」
「構わん」
短く返答したアイベルクに対して、槍使いの男は自分の正体を話し始めた。
「エスヴァリーク帝国騎士団、特殊部隊の副隊長を勤めているニーヴァスだ」
「特殊部隊……とは何だ?」
やはり帝国騎士団の一員だったかと納得したものの、また新たな疑問点が出て来たのでそれもアイベルクは聞いてみる。
警察関係ならばSWAT、同じヨーロッパのイギリス軍であればSAS等が特殊部隊として知られているが、
そうした普通の警察や軍では対応出来ない様な高度なミッションを請け負っているのだろうかとアイベルクは考えた。
そして彼のその考えはあながち間違っていなかった様だ。
「帝国騎士団の特殊部隊は一般の騎士団員達とは違って隠密行動や暗殺、それから潜入等に特化している部隊だ。
俺はそこの特殊部隊で副隊長の座を任されている」
「なるほどな、そっちの方か」
でも、何故ここにその特殊部隊の人間がやって来たのかと言う事がいまいちアイベルクにはピンと来ない。
だけど思い当たる節が1つあったので、その思い当たる節に絡めて男に質問する。
「特殊部隊の人間がこう言う場所に居るのは、もしかして爆弾事件の犯人やその仕掛けられた爆弾を捜しているからなのか?」
その質問を聞いた瞬間、槍使いのニーヴァスから警戒心がビンビンに溢れている気配が漏れて来た。
「……何故貴様がその話を知っている?」
それを聞かれたアイベルクはニーヴァスに対して全てを包み隠さず話す事にしたのだが、その前に隊長が戻って来るのが
どうやら先だったらしい。
「すまんニーヴァス、あの女に逃げられた!!」
「ええっ!?」
「えっ!?」
洞窟の中を慌ただしくそして騒々しく駆け戻って来た隊長のそのセリフに対して、アイベルクだけでは無くニーヴァスの顔にも
明らかな驚きの表情が浮かんだ。
「だが安心しろ。あの女の足取りを掴める様に細工をして来たからな。だからお前は……ってあれ? その男は……」
隊長もここでようやくアイベルクの存在に気がついた様である。
「ああ、この方は先程からここに居た人なんですけど少し訳有りの様でして……」
「訳有り?」
話の本題がメイベルを取り逃がした事から自分の事に移ってしまったと気付いたアイベルクは、さっき自分の事をニーヴァスが
引き止めた時の様に半ば強引に話をメイベル追跡に戻す。
「待て、私の事よりも今はあの女を追いかけるのが先では無いのか?」
だが、隊長の口からは意外な言葉が。
「急ぎたいのはもっともなんだが、無駄に追い掛け回した訳じゃ無い。言っただろ? あの女の足取りは掴める様にして来たって」
「分かるのか?」
どうやって足取りを掴むんだ? とアイベルクが問いかけてみれば、男は上着の内ポケットからガサゴソと
1つの大きな金属製の物体を取り出した。
「これに今の女の位置が断続的に表示される様になっている。女の身体に上手く発信機を取り付けて来た。
だからこの世界中の何処へ逃げようとも女の居場所が分かる」
「……そうなのか」
地球と似た様なテクノロジーがどうやらこの世界では魔術によって幾らか実現されているらしいと解釈したアイベルクに、
今度は特殊部隊の2人が獣人2人を引きずり起こしながら尋ねる。
「さて、俺が聞きたかった事だが……魔力を貴様の身体からは全く感じないのは何故だ?」
「ああ、それは俺も気になっていた。さっきはあの獣人達と戦うのに必死だったし、お前の服は黒いから存在に気付くのが
遅れたのは謝る。だが魔力が無い人間に直接俺達が出会ったのは初めてだ。お前は何者だ?」
そう言えば城に居る時に特殊部隊の人間に出会った事は無かったなとアイベルクは思い出し、素直に今までの事を
洞窟の外に向かって歩きながら手短に話す事にした。
「……と言う訳だ」
「そうか、セバクターに保護されてそしてあの女とこいつ等に拉致されたんだな」
「分かった。それなら俺がこいつ等のワイバーンで責任を持って城まで送り届けよう。ニーヴァスもこの獣人達を城まで送り届けるんだ」
「分かりました」
今までの経緯を述べた一連の会話の中で、隊長……名乗った名前はクローディルと言うその男はセバクターの知り合いらしい。
今回の爆弾騒ぎの件においても特殊部隊の人間が駆り出され、色々な場所で捜索活動が騎士団の人間と一緒に進められていると言う。
「こいつ等が居るから余り詳しく話せないが、俺達特殊部隊に後はこの爆弾事件は任せておけ」
クローディルの言う「こいつ等」とは今一緒に連行しているクロヴィスとエドワルドの獣人2人に他ならない。
「分かった。それで……さっきワイバーンを使うって言っていたが、あんた等もワイバーンを操れるのか?」
「そうだ。騎士団ではワイバーンの操縦訓練もしているからな。こいつ等があの女と一緒に自分達のワイバーンに乗って来てくれて助かったぜ」
クローディルが獣人2人に、空を飛んで城へ向かう事が出来る移動手段を提供してくれた事に感謝の意を述べつつ
一行は洞窟の出口へと辿り着いた。
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