A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第43話


(……?)

足音は確実にこの開けた場所に向かって近づいて来る。それも複数人。

もしかしたらこの盗賊団の増援が来たのでは無いだろうかとアイベルクは考えるが、

そのまま待ち続けるアイベルクの目の前に現れたのは見慣れない人物達だった。

1人は大剣を背中に背負った若い男であり、そこには無造作に跳ねさせた金の髪の毛が特徴的な、

若干自分より背が低い男の姿が。そして背中には大きな剣を携えているので、これが彼の武器になっているのであろう。

1人は無造作に跳ねさせた金の髪の毛が特徴的な、若干アイベルクより背が低い男。

背中には大きな剣を携えているので、これが彼の武器になっているのであろう。

もう1人はその真っ白な髪の毛が、相手から見て左目を覆い隠す程伸びているのがポイントのこれまた若い男で槍を手に持っている。

どちらの武器も洞窟の通路の中で振り回すのは非常に難しそうである事だけはアイベルクにも理解できる。

しかも洞窟の外の雨は本降りになったのであろうか、2人とも全身ずぶ濡れの状態であった。


アイベルクはすでにその2人に気が付いていた。

だがアイベルクに少し遅れる形でそんな2人が突然現れた事に気が付いた、アイベルクの背中の上に乗っていた

エドワルドが声を上げる。

「何だお前達は?」

そのエドワルドの声に、一心不乱に魔石を集めていたクロヴィスとメイベルも気が付いた。

「あら、何よ貴方達?」

「俺達の知ってる奴等じゃ無いな。悪いけど今は取り込み中でね。俺達の事は何も見なかった事にしてさっさと消えて貰おうか」

クロヴィスは敵意を剥き出しにしつつその上面倒臭そうな声色で、突然現れた2人のずぶ濡れの男に対して

警告のメッセージを発した。

「そう言う事よ。私達の事を何も見なかった事にしてくれれば何もしないわ。だからさっさとここから消えなさい」

メイベルも鬱陶しそうな口調で2人に撤退を要求する。


だが2人のずぶ濡れの男の内、白い髪の毛の槍使いが口を開いた。

「ここは部外者が勝手に入って良い場所では無い筈だが? 出て行くのはこちらでは無くお前達の方だろう」

低めの声で無機質に吐き出されたそのセリフに続いて、短い金髪の大剣の男も同じ様な事を口にする。

「出て行くに当たって、そっちの2人が袋に詰めている石は置いて行って貰うぞ。それは発掘途中の魔石だからな。

このままであれば貴様達は俺達の手で窃盗の罪で城に連行させて貰わなければならない」

若干遠回しに、ここでその魔石を素直に置いてここから立ち去らなければ逮捕するぞと言う事を伝えてみた金髪の男だったが、

それを聞いたエドワルドがメイベルの方を振り向く。

「姉御、この男達はもしかすると……」

皆まで言わずとも分かると言いたげにそのエドワルドのセリフをさえぎって、メイベルは自分の予想を言いながら立ち上がった。

「この男達は帝国騎士団の人間ね。旅人っぽい格好だけど、その口調からすると騎士団の人間と言うのがしっくり来るからね」

「騎士団の人間だって? そんな奴等が何で今ここに?」

残されたクロヴィスは周りの状況を少しずつ理解しながらも、まだ分からない事に対して疑問をメイベルに投げかける。

「それは分からないわ。だけどここに騎士団の連中が居るのであれば、ここから早く立ち去るべきよね」

そう言いながら彼女がゆっくりと愛用の斧を構えるのを見て、部下の獣人2人も立ち上がってそれぞれの武器を構えた。

「でも、魔石はしっかり貰ってくわよ」


それを聞き、騎士団の人間らしき男2人も大剣と槍をそれぞれ構えた。

「そうか。ならば仕方が無いな。俺達と一緒に騎士団まで来て貰わなければならない」

「ああ。さぁ、やられたい奴から掛かって来いよ!!」

金髪の男がそう声を張り上げたのを切っ掛けに、最初にクロヴィスが2人の男に飛び掛かって行った。

当然クロヴィスだけでは無く、メイベルとエドワルドも同じ様に2人の男に向かって行く。

そうなれば、アイベルクの身体はエドワルドが背中の上から離れた事によって身動きが取れる様になった。

(誰かは知らないが助かった!!)

心の中で感謝の気持ちを述べつつ、戦いに巻き込まれない様に大きく距離を取って離れた場所に座り込む。

相変わらず肩の部分にナイフが突き刺さったままである為、壁に背中をくっつけて自分の身体を安定させる事は出来ないものの、

そこは長年のテコンドーと軍隊格闘術で培ったバランス感覚でカバーする。

まずは後ろ手に縛られている両手を前に持って来る為に足を折り曲げ、柔らかい身体を活かしてぐるっと足に腕を通す。

腕が前の方に来たら、今度は手首のロープの結び目にかじり付いて歯の力と首の動きを駆使してロープを解き始める。

「ぐっ、ぐぐ……!!」

チラチラと戦いの状況に目を向けつつ、緩々とロープが緩んだのを確認したら仕上げに岩の壁にロープを擦り付けて解く事に成功した。

(良しっ……)

最後に自分の1番の武器である足のロープを、白い手袋をはめたままの手で器用に解いてようやく自由の身になる事が出来た。


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