A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第7話


「セバクター様!!」

「どうだ、何か進展はあったか?」

「いえ、こちらは何も……あれ、その方は?」

馬を掛けさせる事、あの洞窟からおよそ3分。

出発したばかりにも関わらず、少し進んだ場所でスピードダウンして行く馬の様子にアイベルクが疑問を覚え始めた。

その疑問はすぐに解消される。

馬の進む方向を見てみると、そこにはそれこそモンゴルの遊牧民の様にテントを設置してキャンプを張っている

人々の集団があったからだ。

だが、そのキャンプを張っている人間達の格好に再びアイベルクは疑問を覚えてしまう。

(何故、揃いも揃って武装しているのだ……しかも中世の騎士の格好で……)


後ろで自分を逃さない様にしつつ馬を操るセバクターもそうなのだが、ここまで大掛かりなイベントに自分は

迷い込んでしまったのだろうか?

それとも、何か映画の撮影でもしているのだろうか?

あるいは、自分を騙す為にこんなに大掛かりなエキストラやセットを用意したのだろうか?

アイベルクの頭の中には次から次へと疑問が溢れ出て来て、止まってくれそうな気配がまるで無いのである。

考えても考えても色々な可能性があるだけに、どの可能性が1番正解に近い位に高いのかを考えていると

後ろのセバクターが馬をストップさせてヒョイっと飛び降りる。

「降りろ」

相変わらずの命令口調ではあるが、いちいち気にしていても仕方が無いのでアイベルクも縛られた状態で

器用に地面へと降り立った。


そして、セバクターの名前を呼びながら兵士の格好をしている女が駆け寄って来たのである。

「この男はこの先にある洞窟の中で出会った、魔力を持たない人間だ」

「えっ!?」

セバクターがアイベルクとのファーストコンタクトを説明した途端、兵士の顔色がアイベルクにも見て分かる程に変わった。

その顔に浮かぶのは紛れも無い驚きと、それから少しの恐怖心と興味津々と言う気持ちがミックスされている

何とも言えない表情であった。

「た、確かに魔力はありませんが……洞窟の中にこの人が居たんですか?」

「ああ。城に連行するんだ。絶対に逃がすなよ」

「は、はい……」

その兵士は応援の兵士を呼びに行き、すぐに5人程の兵士に取り囲まれる形でテントの1つまで連行されてしまった。


簡素な作りの木の椅子に座らされ、手は後ろ手に拘束されたままで、丁寧なのか警戒しているのか見張りの兵士が

アイベルクの斜め後ろとテントの入り口部分にしっかりと配備される始末である。

(……イタズラにしては、何だか度が過ぎている気がするのだが……)

さすがにここまでされたのであれば、アイベルクも違和感を覚えざるを得なくなって来る。

何処かにカメラがあるのではないかと兵士達に怪しまれない様にテントの中を見渡してみたのだが、

テントの中が薄暗い事もあってそれっぽいものは見つけられずに終わった。

あのセバクターとか言う男がリーダーだと確信したアイベルクの目の前に、テントの幕をバサッと開けて威風堂々とした歩き方で

その張本人が姿を現した。

終わったと言うよりも、彼が姿を見せた事で中断せざるを得なかったと言うのが実態だ。


これまた簡素な木のテーブルを挟んだ反対側のもう1つの椅子にどっかりと座って足を組み、完全にアイベルクを

不審者を見る目つきで睨みつけるセバクターが口を開く。

「さてと、貴様には色々と俺達から聞かなければならない事がある。素直に答えて貰うぞ」

「ああ分かった。逆に私からも聞かなければならない事があるのでな。こっちからも質問させて貰いたい」

まるで交換条件の様なアイベルクの申し出に対して、セバクターは表情を変えないまま冷静な口調でこう言った。

「貴様の出方次第では考えてやっても良い。まずは俺達が先だ」

「……良いだろう」

今の自分の立場は囚われの身であるのだが、それでもアイベルクはこの異常な状況を何とかしてその頭で理解しなければならなかった。

しかし、無理に今の状況で聞き出そうとすれば反感を買ってしまうだろうし聞き出せなくなってしまう可能性が高くなるだろうと判断。

(まずは私に向けて繰り出される質問に対して、1つ1つしっかり答えなければ話が進まないらしい)


そのアイベルクの考えはセバクターとリンクする部分があったらしい。

(質問をこちらが先にさせて貰わなければ、話がまるで進まなくなりそうだ)

どうやらこの男には色々と事情がありそうだからなと思うセバクターから、いよいよ最初の質問をアイベルクは受ける事になる。

「それでは最初の質問だ。貴様は何故、あの洞窟の中に居たのか説明して貰おうか」

「……」

いきなり回答に困る類の質問がやって来てしまい、アイベルクはポリポリと顔を指で……掻けなかった。

後ろ手に拘束されているのだからそれも当たり前である。

同じ様な質問を洞窟の中のファーストコンタクトの時にもされた気がするし、同じ事を何回も聞かれるのは余り良い気はしない

アイベルクだったが、ここは話を進ませる為に素直に自分の体験した事を話すと決めた。


A Solitary Battle Another World Fight Stories 6th stage第8話へ

HPGサイドへ戻る