A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第30話


「ええと、今の俺達が居る町が大体この辺りで……馬のレンタルをやってる町と次のミッションの町の

位置関係からなるべく効率良く回れるルートを探したいもんだぜ」

行く先々でこの先、何が起こるのかと言うのは勿論グレリスにもアニータにも分からない。

だからこそ、事前にルートを考えておく位の事は今までのバウンティハンターの仕事の中で賞金首を確実に

捕まえる為にやっておかなければならないとグレリスは学習して来た。

その時の経験が今こうして活かされると言うのは、グレリスにとって何だか良いのか悪いのか分からない複雑な

気持ちを生み出していた。

(結果的には役に立ってるから良いかな……)

そう思っていなければやってられない様な気持ちになっているグレリスに、隣のアニータからこんな指摘が。

「ちょっと待って。さっき、ギルドで新しく依頼を受けたわよね。その依頼の行き先も考えておいた方が良いと思うんだけど」


アニータの指摘にグレリスはハッとした顔つきになった。

「あー、そういやそうだったな。だとすれば……」

ずっと移動の事ばかり考えていて、新しく受けたミッションの事がすっかり頭から消え去っていたグレリスは、再びルートを練り直す事にした。

それに馬を借りるとなれば当然金も掛かる筈なので、その場合は諦めて徒歩で移動するか馬のレンタル代金を

稼ぐ為にまた新たなミッションを受けなければならなくなってしまう。

地図を見せて貰って行き先を決める前に、グレリスは自分が新たにアニータの手伝いと言う名目で受注したミッションを改めて確認する。

「今の俺が請け負っているのは全部でこの3つ……で、さっき請け負ったばっかのミッションがこの2つか」

追っ手の可能性がある以上、なるべく時間の掛かるミッションは避けて受注している。

その考え方を振り返ってみると、最初に請け負ったこれからチャレンジするミッションである捜索活動はかなり時間が

掛かるのでは無いかと言う考えに辿り着いた。


しかし、ギルドでの暗黙の了解としては1度請け負ったミッションは何か特別な事情が無い限りは辞退しないと言うルールである。

確かにキャンセルも制度として認められているものの、自分がそれを「出来る」と言う事で仕事を請け負う形になるのだから

余りキャンセルをしてしまうと依頼主との信頼関係が無くなってしまうのはグレリスにもすぐイメージ出来る。

地球でもバウンティハンターと言う不安定な職業で、しかもサラリーマンと違って歩合制で、営業も自分で売り込みをかけたり

賞金首を捕まえたりしてリスペクトされなければいけない個人事業主の立場である。

そんな仕事のスタイルで今までやって来た以上、ここでもそうした考え方があると言う事をアニータから聞いたグレリスは痛い程

その暗黙のルールを分かってしまった。

キャンセルが基本的にNGとなっているのであれば、請け負った以上はしっかりとこなさなければならないと言う事で捜索活動は

ペースを早めに行う事を決めつつ残りの2枚の依頼書を見た。


「こっちが木の実の採集で……こっちは金の回収業務か」

金の回収と言うミッションならば、それこそバウンティハンターの仕事そのままなのでグレリスにとっては慣れたものである。

支払いを踏み倒して逃げる様な、ストレートに言ってしまえば「まともじゃない」相手から金をきちんと支払って貰う為に

追いかけているのが自分の地球でのミッションなのだから。

だからこそ、このミッションの依頼書を見た時にグレリスは反射的にこれを受けようと決めてしまった。

依頼の内容を一通り見てみても、こう言う仕事なら大丈夫だと言う気持ちで。

しかし、この簡単である筈のミッションがグレリスにとってなかなかの修羅場を呼び込んでしまうと言う事を彼自身はまだ知らない。

そしてもう1つのミッションである木の実の回収はもっと簡単なものである。

本当に、依頼書に書いてある場所に向かって木の実を採って来ると言う内容だけだった。


アニータに確認して貰った所、このミッションで向かう地図の場所であれば魔物も討伐されているし視界も開けているので

なかなか襲撃されにくいと言う話だった。

それはそうと、まだ余り時間が経っていないとは言え幾ら何でも追っ手が来るのが遅すぎやしないのかとふとグレリスは疑問に思った。

「なぁ、あの武器な建物の奴等……俺を追いかけて来たりしないのかな」

特にアニータからの返答を期待していた訳でも無いが、疑問に思ってしまった事はしょうが無い。

「さぁね。私は確かにあそこに居たけど、あそこの連中の考えている事は私には分からないわよ。追いかけられないのならそれで良いと思うけどね、私は」

「……そうか」

やっぱり素っ気無い態度のアニータではあるが、確かにあそこの連中が追いかけて来ないのであればグレリスにとって都合が良い展開である事に違いは無い。

この先も自分を追いかけて来てくれないで欲しいと願いつつ、次のミッションにチャレンジする為にグレリスは立ちあがろうとした。


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