A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第13話


悶々としたそんな気持ちを頭一杯に詰め込みつつ、そのまま道を進んで行くとやがて町並みが眼下に見えて来た。

どうやらさっきの不気味な建物は山の上、もしくは小高い丘の上に存在していたらしい。

だが、今のグレリスにはそんな事よりももっと大切な事をこのアニータに聞かなければならないのだ。

自分が1番したくないその予想。

だけどそうすると最もしっくり来るその予想。

そんな現実、真面目にあって欲しく無いと言うのが今のグレリスの率直な気持ちだ。

自分が履いているショートブーツの底と土の地面が擦れる音と、斜め前を歩いているアニータの足音だけが道に響く。

今まで騒がしかったあの不気味な建物とはまるで違う今の場所だが、グレリスの頭の中は色々な感情が

ミックスされた状態になっており、あの建物に居た時よりも確実にワーワーと騒がしい状態になっているのだ。

こんな場所にいきなり来てしまった驚き。

閉じ込められた状態からスタートした怒り。

追い掛け回された事による身体と心の疲れ。

何とか脱出出来た事で生まれた安心感。

これから自分はどうなってしまうのだろう? と言う不安。

もしあのハーレーを停めた場所に帰れない場合は……と言う恐怖。

全てひっくるめて、とにかく今は状況把握が最優先だと何回もさっきからグレリスは結論付けている。


そのワーワー騒がしい気持ちを抑えながら、アニータの後に続いて道を歩いて行く事およそ25分。

ようやく、あの不気味な建物とは違ってきちんとしている町並みが見える場所までやって来た。

と言うよりももう少し……距離にすると大体200メートル位の場所までようやくグレリスとアニータはやって来たのである。

「ふいー、やっとここまで来たって感じだな」

「何言ってるのよ、まだそんなに歩いてないわ。とにかくまずはお金が必要でしょうから、ギルドに向かって幾つか依頼を受けなきゃね」

「おいおい、また俺の知らねー単語が出て来たぞ。そのギルド? って言うのはどういう場所なんだ?」

説明を求めるグレリスに対し、アニータは非常に簡潔な答えを口から出した。

「行けば分かるわ。まだ朝は早いけど、ギルドは時間関係無しに1日中開いているからね」

何だか無責任な女だなーとグレリスは思ったが、そんなに言うのであれば思いっきり見てやると意気込む。

ギルドと言う単語そのものはグレリスにも聞き覚えがある。

(ロールプレイングゲームで良く聞くよなぁ?)


グレリスがプレイして来た色々なロールプレイングゲームでは、主人公が依頼を請け負ったりストーリーのクリアに必要なキーポイントとして

存在しているパターンと、自分の所属する組織の通称としてギルドと呼ばれるパターン位しか今の所は思いつかない。

今のアニータの言い方からすると、多分前者の意味で言っているのかなとグレリスは推測した。

そう考えてみれば、もしここがアメリカから遠く離れた場所だったとしても仕事のアテがもしかすると見つかるかもしれない。

「俺にも出来そうな仕事があれば良いんだけどよ」

ボソッとそう呟いたグレリスだったが、アニータは振り向いてそんなグレリスに不穏な事を言い出した。

「無理かもね」

「はぁ? そんなの分かんねえだろーが。ギルドってのは仕事を紹介してくれる場所じゃねえのか?」

カチンと来たグレリスは思わず反射的にそう言い返したのだが、アニータは呆れた様な、もしかすると馬鹿にしている様な口調でその理由を述べる。

「まぁ確かにあなたのその予想で間違いは無いわ。けど、ギルドの連中からは多分目の敵にされる事も間違いないでしょうね。

魔力を持たない人間がまた現れたって知ったら」

「また……?」


その瞬間、グレリスの頭の中にフラッシュバックする光景が。

(そうだ、確かあの時も同じ様な事をあの野郎が言っていた気が……!!)

フラッシュバックして来たその記憶の中で、あの青髪の男が言っていたセリフが思い出された。


『お前の仲間のせいでこのソルイール帝国はめちゃくちゃにされてしまったんだ。騎士団長とギルドトップの傭兵を殺した奴は、

お前と同じ様に魔力を持たない「異分子」の人間だった。そしてお前も同じく魔力を持っていない。つまり、お前が

あの「騎士団長殺し」の仲間って可能性が高いからな』


一体あれはどう言う意味なのだろうか。

と言うよりもその前に、今目の前でアニータが口にしたセリフ。

「また……って今あんたは言わなかったか?」

「ええ、また魔力を持たない人間が現れた。それは事実だからね」

「と言う事は俺の前にも、同じ様な人間が居たって事か!?」

「だからそうだって言ってるじゃない。ギルドに行ってから詳しく話してあげるわよ。だけどもし、ギルドであなたが生き残れたらの話だけどね」

「何だよ、それ……」

ここが何処の国だかすら分からない。

今の状況すら目まぐるしく動き過ぎているので、元々良くないグレリスの頭ではもはや理解不能。

それでも、今のグレリスにとって頼れる人間はこのアニータしか居ない状況だ。

(とにかくこの女の言う通り、ギルドに行くだけ行ってみなきゃな)

嫌な予感の方が圧倒的に大きいが、今の自分はそうするしか無いと若きバウンティハンターは悟ったのだった。


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