A Solitary Battle Another World Fight Stories 5th stage第11話


「全く、無茶するわね」

「あ、あああああああっ……!?」

木の上から飛び下りて、目の前に歩み出て来た人影にグレリスは大きな声を上げて目を見開いた。

グレリスの目の前に現れたその人間は、紛れも無くあの薄暗い牢屋に閉じ込めた筈なのにどうしてか脱獄し、

そして自分の脱出ルートを教えてくれた赤毛の女だったのだ。

2度ならず3度までも自分の目の前にこうして現れると言う事は、そこまで自分と関わりたいと言う事

なのだろうかとグレリスは頭で考えてみる。

そんなグレリスに対して、女は若干焦っている様な呆れている様などっち付かずと言う口調でこの先の道を促し始める。

「こんな所で手間取っていたら、貴方はすぐに見つかって捕まるわよ。さっさと林を抜けて町に下りてしまえば

何とかなるかもしれないわ」

「え……ええっ……?」


何故、この女はここまで自分に協力してくれるのだろうか?

何か裏があるのでは無いだろうかとグレリスの中で疑惑の念が大きくなって行く。

そのグレリスの気持ちを見透かしたのか、女は更に焦った口調でセリフを続ける。

「とにかく早くここから逃げましょう! 私の事を怪しいって思ってるかもしれないけど、結果的に上手く脱出出来た訳だし

このまま道なりに林を抜ければいずれは町に辿り着くわ。信じないならそれで良いけど。それじゃ、私は先に行くからね!!」

女はくるりとグレリスに背中を向けて遠ざかって行く。

グレリスはその遠ざかって行く背中を見て、自分の中にある葛藤する気持ちと3秒戦った後で1つ頷いてから女の後を

追いかけて駆け出した。

(やっぱ、頼れる人間が俺にだって欲しいんだよ!)

1人じゃ何にも出来やしねぇ。今までの脱出でも、最初の牢屋の場所で女を自分の代わりに牢屋に放り込み、

そしてその女に今度は脱出ルートを教えて貰った。

この一連の流れからも、自分1人じゃ出来る事は限られているとグレリスは痛い程に実感せざるを得なかったからである。


だったらここはあの女を信じてみる方に賭けるとするか、と言う事でグレリスは女を追いかけて林を抜けるのだった。

「……それで? どうして俺にあんな脱出ルートなんて教えてくれたんだよ?」

女に追いついてから林を抜け、町へと下る街道を歩くグレリスは自分の左斜め前を歩く女に問いかける。

それにこれも聞いておきたかった。

「さっきのバジリスクの矢……あれもあんただよなぁ? 何で俺なんか助けた? どうしてこんな事するんだよ?」

グレリスのそんな問いかけに、歩きながらも女はゆっくりと振り向いてこう答えた。

「一言で言えば、興味本位って奴ね」

「興味本位?」

その瞬間、グレリスはハッとした顔つきになる。

「なぁ、もしかしてこの言葉に関係があるのか?」

「どんな?」

「ええっと、魔力がどうのこうのとか実験材料が何だかって……」


グレリス自身にとっては全く持って聞き慣れない単語では無い。

RPGのゲームで良く聞く単語であり、そう言う事に関しては全く知らない訳では無いグレリスだが、地球の実際の生活の中に

おいてはまず耳にする事は無いだろうと思っている。

もし耳にする機会があるとすれば自分の様にそう言うジャンルのゲームをプレイしたり、ゲームの開発者だったりファンタジー映画や

小説等の作者だったりと、いわゆるサブカルチャー的な物に対してのプレイヤーやクリエイターの生活の中位だろうと考えていた。

自分もファンタジーなジャンルのゲームプレイヤーの1人であるグレリスに対して、女は迷いの無い表情で頷いた。

「そうね。でも、今は貴方に死なれてしまったらこっちが困るから脱獄の手伝いをしただけよ」

「は? え?」

自分に死なれてしまったら困る?

脱獄の手伝い?

1つ目の疑問も2つ目の疑問もさっぱりグレリスにとっては意味の分からないものだった。


「そ、そりゃあ一体どう言う事だ?」

当然グレリスは発言者の女に再度問いかけるが、女は今の所話すつもりは無いらしい。

「機会があったらその内話すわ」

「何だよそれ」

「それはそうと、貴方の名前は?」

話はここで終わりだとばかりに、今度は女の方から質問が飛んで来た。

「えっ、俺?」

「そうよ。貴方しか居ないわよ」

何だかムッとする言い方だが、別に教えるのはフルネームじゃ無くても良いかと思って教える事にする。


「俺はグレリスだ。君は?」

「私はアニータよ」

女はアニータと名乗った。名前が分からないよりは呼びやすいのでグレリスには楽である。

「ならアニータ」

「何?」

「この先の行動、一体どうするんだ? まさか俺と一緒に行動してくれるのか?」

興味本意で自分を助ける為に行動した、とアニータはさっき言っていた。

だったら助け出した……のか上手く牢屋から脱出する時の切っ掛けに使われる事になったのか微妙な立場の彼女が、

自分と一緒にこの先行動してもおかしくは無いだろうとグレリスは考えた上で質問する。

だが、そのアニータから返って来た答えはグレリスを悩ませる事になってしまうのであった。


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