A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第24話
(散らかってるな)
何処か呆れた様な感情をリオスは抱きながら、とにかく何か地球へ帰る為の手掛かりが無いか
どうかをそこそこ広い平屋の一軒家中を探して回る。
床には酒盛りをした残骸であろうワインのビンや何かの食べかすらしき欠片等が散乱しているし、
壁紙には至る所にシミが新しい物から古い物まで放置されたままになっている。
これだけ見てもよっぽどずぼらな生活をしていたんだろうなと分かる部屋の様子に若干リオスは顔をしかめつつ、
同じくワインの空ビンやお菓子の食べかけが入った皿が乗っているテーブルの上に目をやる。
(……ここも汚い)
買い出しのリストやら依頼の内容を纏めた書類やら、夜の如何わしい店の女の連絡先であろう名前やら住所まで
実に様々であったが、リオスの目に留まったのは小さくとも妙なワードが書かれているメモだった。
(これは……!!)
そのメモ用紙を他の書類の下から1枚引っ張り出したせいで、上に乗っていた書類がバサバサと音を立てて下に
落ちていったがリオスはそんな事はお構い無しにメモの内容を読んでみる事にした。
(暗殺決行当日の流れ……料理の仕出し業者をあらかじめ買収しておき、その仕出し業者に料理を運ばせる途中で先に
城内に潜入する、兵士に変装したメンバーが毒を仕込む。そしてそこから料理を仕分けておき、毒味をしてあると
言う事にしておけばそれで良し……)
このメモの内容が単なるイタズラだったとしたらそれで良いのだが、もし実際に行われる計画であればここに居たさっきの
メンバー達は暗殺計画を企てている事になる。
それだけでもリオスは言葉を失ったのだが、だとすればその暗殺のターゲットになっている人物は誰なのか、そもそもこんな
大事な事を書いたメモを如何わしい女の連絡先と一緒に置いておくなよとか、暗殺の計画を知ってしまったとあれば
騎士団にまた報告に行かなければならないだろうとか様々な思考がリオスの脳裏をよぎる。
しかし、リオスにはまだまだ天は味方してくれない様だった。
ギィ、と家のドアが開く音がして誰かの足音が聞こえて来たのはその時だったからである。
「やっべお気に入りの女の連絡先忘れちまった……ぜ?」
「……」
ドアを開けて戻って来たのは、あろう事か余程縁があるのかどうか分からないあの茶髪の……リオスが尾行していた男だった。
「おっ、御前……何で、いや、それよりも俺達の家で何を……あ、あの薬は一体御前にそんな馬鹿な……」
言いたい事が支離滅裂な状態になっている男に対し、チャンスは絶対に逃がさないとリオスは一気に男に詰め寄って足払いをかける。
こうした低い場所への攻撃は低い体勢をする事が多いカポエイラの得意分野だ。
「うおわ!?」
「答えろ。御前達は一体何をしようとしているんだ」
足払いをかけたリオスは素早く男の背中に馬乗りになり、男の右腕を自分の右手1本でギリッと後ろ手に捻り上げ、フリーな左手で
男の頭を押さえながら問う。
有無を言わさない様なリオスの低い声に一瞬男はたじろぐが、盛大に暴れて身体をよじって抵抗する。
「大人しくしておけ!」
更にリオスは男を押さえつける力を強くしてそう怒鳴ったが、次の瞬間男のフリーな左手が何かを掴んだ。
それにリオスが気づくと同時に、リオスと男の周囲に白い煙が広がる。
「うほっ!?」
何かの粉だろうか。白い煙が視界を遮って思わずリオスは拘束を緩めてしまい、男はそれを見逃さずに一気にリオスの下から這い出た。
一旦リオスは床をゴロッと後ろに転がってから立ち上がると、男の姿を粉が晴れて来た視界に捉えてバトルモードに入る。
「おら、そら!」
這い出た男はその辺りに散乱している物を手当たり次第に投げつけて来る。
それを素早く右に左にかわしながら、カポエイラ特有の動きで男を翻弄する。
その戦法に男が戸惑うのがリオス自身にもはっきりと伝わって来た。
「ふっ!」
息を吐いてから側転をしつつ、男の頭目掛けて足を盛大に振り下ろす。
そしてそれを避けられてしまう事までリオスは想定し、着地と同時に手はついたまま今度は斜め上目掛けて足をぶん回す。
そのぶん回された右足が男の側頭部にクリーンヒットし、情けない呻き声を上げてそのまま男は地面へと崩れ落ちてしまった。
「手間をかけさせてもらっては困る。さぁ、御前達が一体これから何をしようとしているのか……それから仲間達の人数……ああ、リーダーも
含めてだ。そしてあのメモの暗殺に関する事まで、洗いざらい話して貰おうか」
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