A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第28話
「ええと……何処まで話したんだったかな」
「確か、情報収集の話からこの国の騎士団の話に移って行ったかと」
「あーそうだったな。まぁそんな訳で色々な国の人間がリーフォセリアの騎士団には所属しているから、
他国での情報収集に関しても非常に地元の利を活かしたりする事が出来るから効率が良いんだ。
だからそうやって集めた情報が王都に集まるって訳さ」
話した事によって身体に熱が溜まって来たのか、バサリと白い上着を脱いで黒のシャツ1枚になったアンリ。
半袖のシャツに、鍛え抜かれた頑強な筋肉が浮き出ているのが分かる程身体つきが良い。
流石は実力主義のリーフォセリア王国騎士団の中で、師団長の役職に就いているだけの事はあるなと
レナードがその身体を見ながら思っている目の前で次の話題にアンリは移る。
「後はそうだな……特徴と言えば他国との国境は勿論あるけど、この世界の左上の部分に関しては海沿いも全て
掌握しているからな。だから活発なのは軍事力の強化や騎士団の活動だけじゃない。農業や漁業も盛んな王国と
して知られている」
「ふむ……。では、他国との関わりに関して教えて頂きたいですね。特に隣国との関係を」
次の質問を振られ、アンリは地図を指で指し示しながら答える事にする。
「隣国としては2つの国がある。まず1つは東の隣国であるソルイール帝国。ここは前にも話した通り、魔力を持たない人間が
騎士団長とギルドトップの人間を殺したと言う話のある国だ。ソルイール帝国とは砂漠で区切られているのが特徴かな」
「砂漠……ですか」
ならばその国境の移動は大変そうだなーと言うイメージを、アンリにレナードはそのまま伝える。
「砂漠を越えるのは大変そうですね」
「まぁな。馬もなかなか進めないから、こう言う場所で空を飛べるワイバーンやドラゴンが活躍するんだよ。
それでも苦労するんだぜ? ワイバーンとかドラゴンは空を飛ぶから、風の強い日は砂漠の砂が上空に舞い上がって視界が
悪くなる。だから思う様に行かないんだよ」
結局人間は自然の力の前には無力なんだよ、と遠い目で語るアンリを見てレナードはアンリが以前そう言う経験をしたのだろうと確信した。
「えーと、それじゃあ次はもう1つの隣国ルリスウェンか」
スススッとアンリの骨太な指が移動し、リーフォセリア王国の下に位置している横長の地形の上でストップした。
「こっちの国の方はリーフォセリアと関わりが深いから、その分ソルイール帝国よりも詳しく説明させて貰うぞ」
「はい。隣国でも関わりが深かったり深くなかったりするんですね」
「そうだ。こっちのルリスウェン公国が深いのは俺達が今居るリーフォセリアとの関係だけじゃ無い。ここの地域全体が深い霧に
包まれているんだ。だからその関係か、全体的に曇りや雨の日が多いんだよ」
「ふむふむ。似た様な国が私の国が属している地域にもありますから大体分かりますよ」
「おお、そうなのか」
霧や雲の発生し易い気温なのか、イギリスのロンドンでは曇り空が1年を通して圧倒的に多い上に雨も良く降るので、
同じヨーロッパ人のレナードから見ても異端と言って良い存在である。
そのロンドンを大きくした様な国なのかなと推測するレナードだが、アンリはそれ以上地球の話題に乗っては来ずにルリスウェン公国の説明を続ける。
「ルリスウェンは工学に秀でた国でな、月の弓と呼ばれる熱血な大公が治めている。リーフォセリアとは友好的な関係にあり、
度々軍事演習も一緒に行っているんだ。あんたがこっちの世界に来た時と同じ様にな」
その軍事演習と言う言葉を聞いた瞬間、僅かにレナードの顔つきが変わったのをアンリは見逃さなかった。
「……気になるか?」
「分かります?」
「分かるさ。あんたも俺と同じ軍人だし、何より軍事演習中にこっちに来てしまったんだからな。こっちの演習には興味あるのか?」
そう問われて、世界が違ってもやはり軍人としては他国の軍隊には興味が無いとは言い切れないとレナードは思っていた。
「そうですね。私も軍人の1人です。機会があれば演習の見学に参加させていただいてもよろしいですか?」
「ああ勿論だ。リーフォセリアの凄さをその肌で感じてくれ。ああ、後ルリスウェンは工学に秀でている国だから、
新たな兵器の開発に余念が無いんだ。それ故に敵対関係の国からは目をつけられているんだけど、そこはほら……仲の良い我が
リーフォセリアのおかげで軍事力には困らない様になってるからな」
「兵器ですか?」
何処でもテクノロジーの進歩を研究するのは当たり前の話なのかとレナードは感心する。
「ああ。新型兵器だ。と言っても流石にそれに関してはリーフォセリアにも教えてくれねえよ。これはルリスウェンの話だからな。
そもそも俺だって新型兵器の開発や実態については知りたいと思ってるけど、流石に師団長の身分でもそこまではさせてくれないから
諦めるしかねえ。リーフォセリアはリーフォセリアなりのやり方で軍事に力を入れるだけの話だよ」
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