A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第24話


ハンバーガーの様なファーストフードを堪能しながら、アンリが言っていた「別件」の内容についてレナードは聞いてみる。

「そう言えばアンリさん、さっきおっしゃってた別件とは……」

その問いかけに、アンリは最後の一口を口の中に放り込んでしっかりと飲み込んでから口を開いた。

「ああ、あれか? あれはあそこのスタッフを俺が前にトラブルから救ってやった話だよ」

「トラブル……ですか」

興味ありげに呟くレナードを見て、アンリはそのまま続きを話し始めた。

「2ヶ月前に、あの店にタチの悪い連中がやって来てな。と言うのもあそこは隠れてコソコソ何か悪巧みをするには

うってつけの場所なんだよ。で、後で調べて分かった事なんだけどあそこの建物を管理している奴がこれまた

如何わしい連中とつるみ始めたんだって。それでその連中から相場の2倍以上の賃貸契約金を支払うから、

商売に邪魔だって言うんであの店のスタッフとオーナーを追い出してくれって頼んだのさ」


「ははあ、つまりその商売に必要だから強引に立ち退きを要求したんですね」

「そう言う事だ。だけど契約している立場もあるし、ああ言う店はアンダーグラウンドな世界であるのも間違い無いから

出て行きたく無いのはあの店の連中も一緒だ。そしてこの後、どうなったと思う?」

クイズ形式で問われたレナードは、数秒考えてこんな答えを導き出した。

「話し合いに応じなければ、力ずくで立ち退きをさせると?」

アンリはそのレナードの答えに縦に深くうなずく。

「その通りだ。となれば当然怪我人も出るだろうし店に被害も出る様になってしまうだろう。だけどあの立地じゃあ

なかなか人目に付きにくいし、営業時間帯である夜の時間帯を選んで大人数で乗り込んでやれば、更に人目に

付きにくくなるからその手段を奴等は選んだ」

「夜の営業時間帯?」

「ああ、さっきは準備中。この時間からあの店の連中は準備を色々と始めるのさ。まぁそれはさて置いて、

俺はこの町の騎士団の統括をさせて貰っている立場だからな。そのタチの悪い連中が色々とあの店に対して

やらかしている事も少なからず耳に入っていた」


だから、アンリはそのタチの悪い連中を配下の騎士団員達に色々と探らせておきその襲撃の日取りを掴んで

襲撃を開始したら何時でも踏み込める様にセットアップしていたのであった。

「俺もその時近くを巡回するスケジュールだったから参加させて貰った。だから俺とあの店のスタッフは顔見知りだって事さ」

そう言った経緯もレナードの脳に刻み付けられた所で、その事よりも大事な話を聞かなければならないのを

レナードは思い出して次の質問にする。

「それで、そのスタッフの方々から聞き出せた情報については何かありましたか?」

「少しならあるけど」

「本当ですか?」

あるならあるで一体どう言う情報なのか。地球に帰る為に活用出来る情報そのもの、もしくはヒントになるものでも何でも良い。

レナードは餌を目の前に置かれて、まだ食べてはいけないとストップをかけられている犬の様な目つきでアンリの手に入れた情報が

その口から出て来るのを待った。


「その手に入れた情報はだな……」

「アンリ団長!!」

物凄い間の悪いタイミング。

町を巡回する騎士団員の1人がアンリを呼びに来たのである。

「おっと済まない、少し待っててくれ」

「あ、はい……」

せっかく良い報告が聞けるかもしれないと言う、何とも絶妙なタイミングで話をストップされてレナードは拍子抜けだ。

しかも、レナードはこの後更に悪い報告を聞かされる事に。

「すまん、今日はこれから色々と書類作業が出て来てしまった様だ。手に入れた情報を話すのは夜でも良いか?」

「良いですよ、職務を優先して下さい」

「分かった。あんたはまだ町を見回ってみるか?」


その問いかけにレナードはうなずいた。

「そうですね。もっとこの世界を見て回ってみたいです」

「分かった。繰り返し言っておくが、今の俺みたいに詰め所から誰か見張りを付けるのが町を回る条件だ。

こいつに代わりに見張りとして付き添って貰うからな」

「分かりました」

アンリを呼びに来たその騎士団員を見張りにつけられる事になり、今度は自分1人でレナードはアルジェルの町で情報を集める事にした。

結論から言ってしまうと、アンリが居る居ない関係無しにレナードは目ぼしい情報を手に入れる事は出来なかった。

アンリから余り目立つ事はしない様に言われた上に、見張りの騎士団員からも「町を見て回るのは良いですけど、

魔力が無い人間と言うのは忘れないで下さい」と言う事で何だか情報を聞いて回るのは気が引けたのである。

(何か、魔力が無い人間だと言う事を騎士団の中だけで留めておいて余り公にしたくないアンリさんの気持ちも分かるんだけど、

魔力を持たないこの身体で散策するのであれば嫌でも目立ってしまう事位アンリさんも分かると思うんだけどなー)

矛盾していると言うよりは観光だけにしておいてくれと言う遠回しのメッセージだったのだろうかと首をかしげながら、

レナードはアンリが先に戻って行った騎士団の詰め所へと見張りの兵士と一緒に戻って行くのだった。


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