A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第20話


ギルドの中は、今の地球からしてみると非常にレトロなイメージのある内装だった。

壁も床も木で統一されている室内は、公共職業安定所と言うよりは場末のモーテルの様な雰囲気をひしひしとレナードに感じさせる。

アンリの言う通りに冒険者が居るには居るが、まばらにしか今は姿が見えない。

壁には求人に関する紙が貼り出され、奥に見えるカウンターでは受付担当の細身の男がカウンターに

やって来ている冒険者に求人の案内をしていた。

「ここがギルドだ。カウンターを挟んで奥の方が酒場になっている」

そう言うアンリの指の先を見てみると、カウンターの両側に道が出来ておりその奥にまだスペースがある。

そっちのスペースの方に回ってみれば、丸い木製のテーブルと小さな椅子が3つのセットが10セット位置かれている場所になっている。

それと安定所側のカウンターと背中合わせになるスタイルで酒場のカウンターが設置されており、

通路が壁で区切られていたら全く別の場所と言える造りになっている。

(スペースを有効利用しているのか)


世界が違っても考える事は人間である以上はやっぱり同じなんだなーとレナードが感心していると、

アンリが手招きをしてついて来る様に言った。

「ちょっと調べたい事があるのでな。俺と一緒に来てくれ」

「あ、はい」

散々取り調べを受けた筈なのに、この上でまた何を聞かれるのだろうか?

疑惑の念がうんざりした気持ちとミックスしつつも、レナードはアンリの元へと歩いて行く。

そこにあったのは丸い……水晶玉?

「何ですかこれ?」

「これも魔道具の一種だ。実際に魔力があるかどうかを測って貰う。詰め所にもあるんだが、タイミングが悪くて

今壊れてしまっていたのでな」

そう言いながらアンリはレナードに、水晶玉に手を広げて触れる様に指示を出す。

こうかな? と思いつつ手袋を外してレナードが触れてみるが、水晶玉にはレナードが見る限り全く変化が見られない。

「……何も起こりませんね。それともこれが普通の反応なんですか?」

レナードはアンリに問いかけてみるが、当のアンリは顔に明らかな驚きの表情を浮かべているのが分かった。


「これは……信じられない。何故魔力が無いのだ?」

疑問の声を上げる横ではカウンターの受付の男も、それからカウンターの異変を察知して集まって来た他の冒険者達も

皆一様に驚きの表情を浮かべていたり、冒険者同士でひそひそと話をしたりしている。

レナードはそんな周りの状況を見て、この状況はどうもただ事では無いらしいとすぐに察知した。

でも、自分の身体に関しては特に異常は感じられないのも分かる。

あのアンリの腕のリングの時みたいに、触った瞬間に大きなショックが襲い掛かって来ると言う事は無い。

他にも身体に発疹が出来たりと言う異常が現れる訳でも無ければ、触った瞬間に気分が悪くなってしまった等と言う事も無い。

魔道具と言う事で若干警戒しながらレナードはこの水晶玉に触った訳だが、この様に触れるだけであれば何の害も

無い物もあるらしいと学んだ。

(リングみたいに装着しようとするとダメなのか?)


あの変なショックが起こる基準が自分にとっては良く分からないレナードだが、それはアンリもまた同じだったらしい。

「ううむ、あんたの身体は一体どうなっているんだ?」

「それは私が聞きたいです。私は生まれてから30年、この身体で生きて来ましたので」

少しつっけんどんな言い方になってしまったかなと一瞬レナードは思ったが、その点に関しては全くアンリは気にしていなかった様である。

「それもそうか。分かった。この件も王都に報告しておくから、あんたも色々と身体の事を調べられる時が来るって言うのだけは

覚悟しておいてくれよ?」

「分かりました」

そう言われるのは少しだけレナードにも予想出来ていた事なので、さして驚きはしなかった。

むしろ、レナード自身があのリングの時の様な不思議な現象について知りたいと思っているので身体を調べて貰う事については

拒否するどころか歓迎する気持ちで一杯だ。


アンリや他の冒険者いわく、この水晶玉に手をこうして触れさせると個人の持っている魔力の大きさに応じて色が白から

薄い紫に変わり、最大級の魔力を持っている人間で真っ赤になるのだとか。

実際にアンリに試して貰った所、アンリが水晶玉に触れた瞬間にその水晶玉が濃い目の紫色に変色するのがレナードにもしっかり確認出来た。

要は地球でも色々なシチュエーションで使われている各種センサーみたいな物、と言う訳なのかとレナードは頭の中で結論付ける。

他の冒険者達や受付の男にも試して貰い、きちんと反応が出た事で水晶玉に不具合が見当たらないと結論付けるに至った訳だ。

と言う事はやはりレナードに魔力が無いとの理由から水晶玉に反応が無かったと考えるのが自然な線であると同時に、この件に関しては

騎士団の中だけで留めておきたいので騒ぎを避ける為に口外を避けて欲しい、とレナードは勿論の事その場に居る冒険者達や受付の男に

アンリが忠告しておいたのだった。


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