A Solitary Battle Another World Fight Stories 4th stage第8話
そのレナードの口調に男は納得した様に頷いた。
「あー、そりゃまあ俺が君の立場だったら多分同じ気持ちになってたと思う。でも、何で俺が君を違う世界の
人間だと確信したか知りたく無いか?」
「ではそれもお願いします」
さっきと同じ様な話の流れになってるけど、今度は一体どんな話がこの男の口から出て来るのだろうか?
期待半分、不安半分と言う気持ちを心に抱えたまま、レナードは男の話の続きを聞く事にする。
だが、男の口からこの後レナードの表情が大きく変わる一言が発せられる!
「このリーフォセリアの隣国のソルイール帝国から……今から少し前だったな。魔力を持たない人間が
現れたと言う情報が飛び込んで来たんだ」
「なっ……」
いきなりこの男は何を言い出すのだろうか。
「私と同じ、魔力? が体内に存在しない人間が他にも現れたですって?」
「ああそうだ。そしてリーフォセリアにもその情報が流れて来たんだ。何しろ、その魔力を持たない人間はソルイール帝国の
ギルドに所属していた若手ナンバー1の人間と帝国騎士団の団長の2人を殺して、現在も逃亡しているらしいからな」
「え……えっ!?」
次から次へと色々な情報が出て来るが、そんな事をペラペラと自分に話してしまって良いのだろうか?
「あ、貴方は一体……」
それにここまでの情報を仕入れる事が出来る人間と言うのは、国の中でもかなり上の地位にある人間で無いと
厳しいのでは無いかとレナードは推測する。
そんなレナードに対して、男は場所を変えようと提案した。
「うーん、ここじゃあ結構な長話になる。世間話って訳でも無いし、結構色々な事を説明しなければいけないから
場所を変えて話したいんだけど、良いか?」
「勿論です。よろしくお願いします」
「なら着いて来い。ここから先は俺が案内するからな」
了承をしたレナードに1つ頷いて、男はレナードを連れて歩き出した。
そして男に連れられたまま歩き出した先で、レナードは段階的に驚愕の事実を知る事になる。
この町はそれなりに広いと言う事でかなりの距離を歩いたのだが、歩いている途中に何度も男は他の人間から話しかけられるのだ。
しかも話しかけて来る人間には共通点として、ブルーメタリックの甲冑をつけている兵士達ばかりだ。
その他には紫色の制服を着込んだ体格の良い男達、同じく紫色の制服に身を包んでいる女達。
男がそう言った人間達に話しかけられているその様子を間近で見ていて、レナードには薄々この男が何者なのかと言うのが予想出来た。
(もしかするとこの人……)
道を歩く途中で次第に大きくなって行く疑問を抱えながら、レナードは黙って男の後にくっついて行く。
すると、今度は繁華街を抜けて人気が余り無くなった所でいかにもと言う風貌をした人相の悪い男達に絡まれてしまった。
「アンリってのはお前か」
自分を先導しているアンリと呼ばれた男よりも、更に大きな2メートル近いリーダー格らしい角刈りの大男がそのアンリの道を
塞いだのを見て、レナードは警戒心を強める。
だが、アンリは特に気にもしていない様子だ。
「何だ、あんた等は」
「半月前、お前に捕まえられた盗賊団の残党から依頼を受けてね……悪いけど少しばかり時間貰えねえかなぁ?」
そう言いながら指の骨をバキバキと鳴らす大男だが、アンリはそれでも動揺した様子を見せない。
それを聞いて、アンリはレナードの方を振り向く。
「すまない、少しここで待っていてくれないか」
「えっ?」
「この者達が俺に用事があるらしい。ここで動かないで待っていてくれ。あんた達もこの男は無関係だから手は出すなよ」
「ふぅん、なら俺達と一緒に来るって事か?」
「少しだけなら。余り時間が無いのでな」
「よぉし、ならこっちに来いよ!」
馴れ馴れしそうに角刈りの男はアンリに肩を組んで逃がさない様にしながら、薄暗い路地裏へと消えて行く。
それでも、レナードには余り心配は無かった。
むしろ気になるのは別の事である。
(4〜5人しか居なかったとは言え、圧倒的な人数差である事に変わりは無い。それでも……あの人の落ち着き様は
やはり只者では無さそうだ)
まるで、普段からこう言う荒事には慣れていると言った威風堂々とした佇まいを見せていたアンリと言う男。
それに、あのリーダー格の男のセリフの中で気になる事もあった。
(お前に捕まえられた盗賊団……つまり、あのアンリって人が捕まえたと言う事か。なら、もうこれで大体イメージは掴めたんだがな)
恐らくこの町の治安を維持する機関の人間である可能性が非常に高いのだが、それ以外にも色々な可能性がある。
もしかしたら荒事になって、それに自分が巻き込まれるかもしれない。
でも自分だって軍人の1人だし、プロレスとルチャリブレの経験もある。生半可な人間に負けないだけのテクニックを身につけている自負がある。
どうしても気になってしょうがないレナードは、あのアンリと言う人間がどう言うやり取りをしているのかを見てみたいと思って路地裏へと足を進ませた。
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