A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第47話
「ん……ん、んんっ!?」
目の前に広がる光景に、ジェイヴァスの頭が一気に覚醒する。
ガバッと起き上がってみれば、そこは何処かの牢屋の様な場所だった。
「ど、何処だここはっ!?」
思わずジェイヴァスは叫んでしまったが、それでも人の気配がまるでしない。
どうやらここは何処かの地下牢らしく、ジェイヴァスは眠っている内にここまで連れて来られたらしい。
「お、おい! 誰か居ねえのかよ!? おい〜って!!」
鉄格子にしがみつき、すぐそばに見える出入口のドアに向かって叫び声をあげるが誰も来る気配は無かった。
「ちっきしょう……何処だよ、ここ……」
一旦鉄格子から離れて牢の中に座り込み、眠りから目覚めて冴えている状態の頭で色々と考えを巡らせるジェイヴァス。
(確か俺はあの馬車に乗って、それから寝ちまったんだよな? でも、ここがどう見ても馬車の中じゃ無いって事は……)
何処かで下ろされて、そのままここまで連れて来られたと言う事になるのだが肝心の場所が分からない。
しかも明かり取り用の窓すら無い。
そして無いと言えば、自分が持っていたあの荷物を入れていた袋と……。
(あっ、バッジもねえぞ!?)
何と軍服に取り付けてあった筈の、あの命がけで手に入れたバッジまでもが無くなっていた。
一体誰が、何の目的で自分をこの場所に連れて来て閉じ込めたのだろうか?
その事で頭が一杯になっているジェイヴァスのそばで、あの出入り口のドアが開いたのはそんな時だった。
「目が覚めた様だな?」
「あっ、てめぇは!?」
ニヤニヤと意地の悪そうな笑みを浮かべながらその出入り口から姿を現したのは、薄暗い中でもはっきりと分かる
その雰囲気にその声。
馬車に乗ったあの町の服屋で鉢合わせしてしまった、あの紫の髪の男だったからだ。
「何で俺をこんな所に閉じ込めやがった!? 俺を一体どうするつもりだ!! ここは一体何処なんだ!?
てめぇ等の目的を言いやがれ!!」
「うるせぇ!! 1度に質問ばっかするんじゃねえ!!」
矢継ぎ早に質問が飛び出したジェイヴァスに対して、男も大声で怒鳴る。
そして一息ついた男は後ろに控える、あの時の金髪の槍使いの女に対して指で後ろ手にクイクイと指示を出す。
それを見た女はそれだけで男の意図を察したのか、懐から鈍く輝くあの時のバッジを取り出した。
「あっ、それ俺の!?」
「もうこれはてめぇのじゃねえ。俺達のもんになったんだ」
「何だと、てめぇ!」
女から受け取ったバッジを、鉄格子で仕切られているジェイヴァスの目の前に突き出して嫌らしく、そして誇らしげに
笑う男にジェイヴァスの怒りも更に増す。
「色々お前には世話になったからなぁ? ヴィスを殺したのもお前だって話を聞いていたが、あの袋の中のヴィスの服を見て確信したぜ」
まだ変装に使えるだろうと思い、ゴミまみれではあったがとりあえずあの袋の中に入れておいたヴィスから奪い取った服。
それがこの男達にとっては、ジェイヴァスがヴィスを殺したと言う証拠になった様だ。
「それにそれだけじゃねえだろ? お前は俺の盗掘団随一の魔法使いの女も殺したし、それから弓使いの女も殺したし、それに何より……」
そこで一旦言葉を切って、男は腰から斧を抜いて思いっ切り鉄格子に叩き付ける。
「っ!?」
威嚇の為にパワーを調整していたのか、鉄格子は切れなかったものの鉄格子に刃が当たった衝撃で火花が散ったのが見えた。
「この後ろに居る、俺の女に手を出したってだけで……十分に俺にはお前を殺す理由があるんだよなあっ!?」
その迫力に若干ジェイヴァスもたじろいでしまったが、それでも彼は引かない。
「は……はっ? 元はと言えばそっちから先に俺に対して突っかかって来たんじゃねぇかよ。その後ろに居る女がよぉ? それにその女に
俺は忠告した筈だぜ? 俺に近づいたらぶっ殺すって。人に向かって平気で刃物を向け、殺しにかかって来る様な連中に対して何で俺が
手加減する必要があるんだよ? 俺の忠告を素直に最初から聞いてりゃ、おめーらの仲間が死ぬ様な事も無かったんだぜ! はははっ!!!」
半ば半狂乱になりながらの状態で長いセリフを言い切ったジェイヴァスに、リーダーの男の怒りのボルテージが最大まで跳ね上がる。
「どうやら本気で死にてぇらしいな? だがまだ殺さねえぜ。てめぇには俺達の仲間が死んで行った時と同じ苦しみを味わいながら、
じわじわとなぶり殺しにしなきゃ気が済まねぇ」
それを聞いていた後ろの女も男のセリフに続く。
「私の彼氏もそうだけど、どっちかって言えば私の方が貴方に対して殺したいと思ってるわね。私は団の纏め役だから、今まで纏めていた
仲間達を貴方に次々に殺されて気が立たない訳が無いのよ」
女のセリフを聞いて、ジェイヴァスは余裕かそれとも恐怖か。
自分でも分からない感情から1回だけ鼻で笑った。
「あーそーかいそーかい。だったらついでに教えてくれや。どうせ俺が殺されるんなら、その前にさっきの質問に答えてくれたって良いだろ?」
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