A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第45話
服屋で変装をしようと思ったのに、あろう事かその服屋でまさかあの因縁の集団のリーダーに再会してしまうとは。
運命のイタズラにしては度が過ぎているぜとこの世界の神に心の中で嘆く。
今の所はどうやら危機は脱した様であるが、この町に居る以上はまたこう言う追いかけっこの様なトラブルがあってもおかしくは無い。
そんな事を思いつつ、ジェイヴァスはこの町のそばのバトルが終わった時に取り返した大きな袋を開ける。
(まぁ、このくっせぇ服よりは良いだろ……)
今のこんな服装で町中をうろついて居るだけでも、その身なりで目立つ事は間違い無い。だったらこっちの服の方が
まだマシだと考えて、ジェイヴァスは辺りの気配に注意しながら袋の中をゴソゴソと漁り始めた。
(意外と目立たないもんだな)
なるべく目立たない様に大通りの端の方を歩きながら、周囲の人間に対して視線をチラチラと巡らせるジェイヴァスだが全然注目されていない。
(少し自意識過剰だったかな?)
ゴミの臭いが意外ときついかも知れないと思っていたのだが、実際は人通りが結構あるので色々な人間の様々な
臭いが混ざり合ってそこまで心配しなくても良かったと気が付いた。
後は自分の身体についてしまったゴミの臭いを何処かで落としたい所だが、宿屋に行けばまたあの連中に見つかるかもしれない。
(こうなったらもう遺跡に行っちまった方が良いかな?)
その方が変に目立たないだろうし、追い掛け回される危険性も無くなるだろうと考えてジェイヴァスは決めた。
今の自分の、ロシア軍の軍服姿を見下ろしながら……。
大通りの人の流れに身を任せ、ジェイヴァスは上手く騎士団の目をすり抜けながら町の出入り口へと近付いて行く。
ここの町は見張りが門の両側に立っているものの、それも恰好だけと言えるものとしてジェイヴァスには見えていた。
(この町に入る時にちらっと見たけど、見張りの奴等は片方は何かボーっとしてたし、片方はすげー退屈そうだったからよっぽど暇なんだろうな)
町の近くで自分が巻き込まれたあれだけの事件があったと言うのに、のん気なもんだぜと内心で呆れながら
ジェイヴァスは門をごく普通に通り抜ける事に成功した。
今までそれだけ大きな事件がこの町で起きていないのだろうか?
だとしたらよっぽど平和ボケしているんじゃ無いのだろうか?
(……ま、こうやって何の疑いも無く軍服姿で門をスルー出来たから良いっちゃ良いんだけどね……)
警備兵も騎士団員の格好をしていたので、町中を巡回している騎士団所属なのだろう。
騎士団はいわば自分と同じ軍人だ。
そんな軍人がこうも平和ボケしてて良いのだろうか、と世界も国も違えど同じ軍人であるジェイヴァスは他人事ながら心配していた。
だが、それ以上に心配する事がもっとあった。
(あっ、そーだ。遺跡のちゃんとした場所を聞かなきゃ……)
山崩れがあったと言うのですっかり忘れていたのだが、その山崩れのあった道から先にどう行けば良いのか分からないままだ。
しかも、ここからどれ位かかるのかと言う事もアバウトにしか分からない。
(確か……この町からもう少し北に行った所の地下だったっけ? そこに古びた遺跡があるって話だったよな)
だけどその「もう少し」の距離が分からない。
徒歩1時間で着いてしまうのかもしれないし、はたまた馬を使って1週間かかるのかもしれないし、もう少しと言うだけでは非常にアバウト過ぎる。
(せめてどれだけかかるか分からなきゃ、途中で餓死する可能性だってあるよなぁ?)
自分で自分に問いかけてみて、ジェイヴァスは一旦町の中に戻ろうかと考える。
でも、町の中でまたあの集団に遭遇してしまったら今までの苦労が全て水の泡になるのだ。
(うーん……良し、こうなれば!!)
だったら聞く事が出来そうな人物の心当たりがあるので、ジェイヴァスはその人物の元に歩いて行った。
目の前にやって来た緑色の制服らしき服を身に纏った、自分よりも年上だと一目で分かる位の老け具合である金髪の男に
見張りの兵士は訝しげな視線を向ける。
(あれ、こんな格好の人間って今まで見た事あったっけ……?)
少なくとも、自分が見張っていた記憶の中ではこんな人物は居なかった筈。
何か怪しいなーと思いながらも、その男が声をかけて来たので応対する事にした。
「ちょっと良いかな?」
「何ですか?」
「この町の北の方に遺跡があるって話を聞いたんだが、徒歩でどれ位かかる?」
「徒歩……ですか……?」
徒歩で行くのであれば最低でも3日かかる。
その旨を男に伝えると、黒い手袋をはめた人差し指で右のこめかみを押さえた。
「ああ、そうか……だったらそこに行く為の、なるべく楽な移動手段って無いか?」
「移動手段ならその近くの村まで馬車が出ていますが、遺跡は今立ち入り禁止になっていますよ?」
「えっ、そうなのか?」
そのリアクションに、見張りの兵士は目の前の男に対する不信感がアップした。
これは幾つか問いただす必要がありそうだ。
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