A Solitary Battle Another World Fight Stories 1st stage第16話


鉱山の中に入って歩き続ける事およそ15分。

なるべくまっすぐに歩くルートを歩いて来たので帰る時のルートは大丈夫だと思っているリオスだが、

そんな事よりも今は心の中が凄く複雑な状況に陥っていた。

(秘密基地と言う単語がしっくり来るかも知れん……)

今、リオスが居る場所は今までとはガラッと空間が広くなっている最深部であろう場所の入り口付近だった。

天井までの高さはリオスが見る限りでもおよそビルの5階分位まであって非常に開放的だ。

それからまだ奥の方にもスペースがある事からどうやらここがやはり最深部と見て間違い無いだろうとリオスは読む。

大方、採掘の計画や業務の報告等がここで行われていたのだろうかと考えてしまうが、リオスが秘密基地だと

イメージはしていても別にコンクリートの壁があったり近代的な機械がある訳では無い。

しかし、まだ明らかに新しい足跡が付けられている土の地面やそこそこ補強されたばかりと思われる壁の落盤防止の

木の枠等が、秘密のアジトと言うイメージをリオスに持たせる事に成功していた。


そしてもう1つ。それはさっきまでしていなかった筈の人の気配がしている事。

それもここの最深部であろう区域に近付くにしたがってより近くに感じられるという事だ。

それも気配から察するに1人や2人、と言う感じでは無い。10人位は居ると見て良いだろう。

間違い無い、この先には誰かが居る。

何時しか魔獣の事もすっかり頭から抜け落ちてしまい、潜入モードに頭の中を切り替えたリオスは今まで以上に

神経を集中させて慎重に気配と足音を殺しながら足を進める。

(……思ったんだが、ここはどうやら1本道の様だな……)

実はここに来る前に、分かれ道の幾つかの奥に進んでみたリオスだったがそのいずれもが行き止まりになっていた。

と言う事は何処までも別の道に続く迷路の様な構造では無く、ただ単にこの鉱山で働く労働者が外に出やすい様にと

道を途中までしか掘り進めなかった事が窺える。実際、何らかの道案内の立て札等があっても可笑しく無かったのに

そうした類の立て札や看板みたいな物すら見当たらなかったからだ。

(事故が起こったりした時に助けを呼びに行きやすいだろうしな……)


そんなネガティブチックな事を考えながら歩いていたリオスの耳に、ふと話し声が聞こえて来た。

(……!)

話し声は70度位のカーブになっている曲がり角の先から聞こえて来る。

歩みを止めてすっと身体を翻し、岩壁の側面に背中を貼り付けてそっとそこから様子を窺う。

(良くは見えないな……ここから分かる範囲での人影は4〜5……多くて7人位か? まだ別の場所にも

人が居る可能性が高い。しかし……)

明らかにその人間達は鉱山で普通に採掘をしに来た格好には見えない。鉱山で採掘をするのであればつるはしやシャベル等の

道具を持ち寄るのが当たり前だが、どう考えてもその人間達はリオスの居る位置から見えるだけでも武装しているのが分かった。

(剣を持っているのが2人、槍使いも1人、素手……ああ違う、短いステッキみたいな物を持っているのも1人……後は見えないな。

だけど武装している可能性は大いにある)

そう考えると、ますますそうした人間達がこんな場所で話し込んでいるというのは不自然だとの結論がリオスの頭に浮かび上がって来る。

(鉱山跡の鉱物を採りに来ているとは思えんな……どちらかと言えば傭兵とかそっちの風貌と言った方が俺の考えるイメージに

近い気がするが、一体この人間達はこんな所で何をしているんだ?)


しばらくここで様子を窺ってみようと思っていたリオスだったが、どうやらこの世界の神と言う者はそんなリオスの覗き見に対して罰を与える事にしたらしい。

「……ぐぉ!」

曲がり角の先の人間達の様子に集中する余りに背後の気配と足音と人影に気がつかなかったリオスは、後頭部にしたたかな衝撃を受けて

どさりと土の地面に倒れこんでしまうのであった。

「……こんな所にのこのこやって来た自分を恨むんだな」

リオスを後ろからシャベルで殴り倒したその人物は、気絶したリオスにそう呟いてから奥に居る自分の部下達を呼んだ。

「こいつを縛り上げておけ。それから向こうにある樽の水も持って来い。水責めをかまして尋問させろ。何が目的でここまでやって来たかと

言う事を絶対に吐かせるんだぞ」

自分の部下達にそう命じた男だったが、彼自身はその後に別の作業をするべく再び鉱山の中に採掘道具を持って戻って行った。


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