A Solitary Battle Another World Fight Stories 3nd stage第6話


ジェイヴァスはそのジャイアントスイングで投げ飛ばした女にダッシュで近づき、

女が起き上がる前に槍を握るその右手を思いっきり踏みつける。

「い……痛いぃぃ!」

「で、てめぇは一体何なんだ? さっきのあいつの仲間か? いきなりこんな物騒なもんで

襲いかかって来やがったんだから、少なくとも俺の味方じゃねーって事は確かだろうけどよ?」

そうだろ? と聞きながら足に込める力は一切緩めようとはしないジェイヴァス。

「色々と聞かせて貰うぜ。素直に吐けばそれで良いが、もし嘘なんかつきやがったらまずはこの手を踏み砕く」


ジェイヴァスの低い声と手の痛みに、女は抵抗するのを止めて観念する。

「わ、私達は盗賊団よ……各地のこう言う遺跡を色々と荒らして回ってるわ」

女が言うには、さっきの紫色の髪をしている男をリーダーとして盗賊団は活動しており、この遺跡も

その盗掘対象の1つとして今日やって来たと言うのだ。

「けど、そこで俺の邪魔が入ったって事かよ」

「ええそうよ。リーダーは貴方を捕まえる事に躍起になってるからね。はたして、貴方がリーダーに

敵うかしらね? 私なんか目じゃ無い位、リーダーはメチャクチャ強いんだから!!」

手を踏みつけられたままの女だったが、ここで自分が倒れてもこの男はリーダーが必ず倒してくれると言う

考えでそのセリフを口走ったのだが、それが逆にジェイヴァスの神経を興奮させた。

「はっ、そうかいそうかい! だったら全力で俺も迎え撃ってやるだけの事さ。今のお前と同じく、地面に叩きのめしてやるぜ!!」


そう言って女の手から離れたその槍を遠くに蹴飛ばしてから、持ち主の女を抱き起こして首を絞め上げるジェイヴァス。

「ああそうそう、お前はここでおねんねだ」

腕でグイッと絞め上げ、女の苦しむ声には何とも思わないままジェイヴァスはその女が死ぬまで絞め上げ続ける。

「がはっ、ぐ、ぐえ!?」

「生まれ変わったら覚えておけよ。戦場は殺すか殺されるかの世界だと言う事を」

まるで自分にも言い聞かせる様にして、自分を捕らえると言うよりも殺す気で向かって来たその女を

窒息死させてジェイヴァスは出口を探し始める。


……つもりだったが、ふと頭によぎった考えに首を絞め上げる力を緩める。

「……待てよ? ああ、まだお前には利用価値がありそうだな」

「げは、げほっ、げぇ……なっ、何なのよ!?」

怒鳴り声混じりの女の問いかけにジェイヴァスは答えず、代わりに女が着込んでいるオリーブ色のジャケットを力任せに脱がせる。

「きゃ、きゃあああっ!? やめてよこの変態!!」

今の今まで首を絞められていたとは思えない程のパワーで抵抗する女だが、軍人であるジェイヴァスとは戦闘経験も

違う様で呆気無くうつ伏せに押さえ込まれる。

それに、2人の頭の中で考えている事もまたどうやら違うみたいであった。

変態呼ばわりされたジェイヴァスは、一瞬キョトンとした顔つきになってからその顔に怒りの表情を浮かべた。

「あぁ!? おめーみてぇなうるせぇ女は俺の好みじゃねーんだよ! 勘違いすんな! この状況じゃおめーの

考えてる事はそうかも知れねえが、俺の考えは違うぜ!」


ジャケットをビリビリに引き裂いて、素早く女を後ろ手に縛り上げる。

そして女をひょいと肩に担ぎ上げ、背中越しに女に命令する。

「出口知ってんだろ? 道案内してくれや。さっきと同じく、もし仲間の元に案内しやがったらぶん殴るからな」

有無を言わせない強い口調でジェイヴァスはそう命令し、女に道案内を任せる事にした。

「この先なんだな?」

「そうよ、この先にこの遺跡の出口があるわ」


女の案内に従って進むと篭った空気の臭いが和らいで行き、段々と草や木の臭いがジェイヴァスの鼻につく様になって来た。

「ねぇ、もう良いでしょ!下ろしてよ!」

ずっと肩に担ぎ上げられたままの女からそんな要望が出されるが、ジェイヴァスは従う気は無かった。

「まだだ。ちゃんと外に出てからだ。それと、遺跡の外に出たらどうすれば町に行ける?」

こう言う実戦の時は非常に用心深いジェイヴァスは、しっかりと人の居る場所までのルートを聞き出してから女を解放する予定だ。

「この遺跡までは登山道を道なりに来れば辿り着ける一本道だから、遺跡の外に出たらそのまま道なりに歩いて行けば町に辿り着くわよ」

「本当だな?」

「本当よ! 貴方って本当に疑り深いのね!? 少しは人を信用するって言う気持ちが無いのかしら!?」


その女の絶叫混じりの問い掛けに、ジェイヴァスは真顔で言い返した。

「バカを言うな。初対面でいきなり俺に向かって槍を突き出して来る様な奴の事を、何で俺が信じられると

思うんだよ? それに、お前等の団体を仕切ってる奴のリーダーが俺を狙ってるんだったら、尚更お前の事なんか信じられねーしよ」

普段の熱血漢で口調も荒い自分からは信じられない位の冷たい声が出た事に、ジェイヴァス自身も心の中で驚きながら

女を担いで出口へと向かう。

(このまま上手くこの遺跡……だったか? さっさとここから脱出して物騒だからおさらばしてえもんだな)


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